対コンボにおけるブレストはどれくらい強い?
2012年12月8日 コラム コメント (2)目次:http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
コラム:http://himajin.diarynote.jp/?theme_id=12
名古屋を応援しての特別企画、対コンボにおける《渦まく知識/Brainstorm》の強さを数値で測ろうのコーナーです。長い計算を読むのが嫌いな人は途中を飛ばして各ケースでの結論だけ読むかまたは一番最後の結論まで飛ばして読んで下さい(∪´ω`) 今回のテーマ自体は以前に解説しましたブレストに関する2記事
「1ランドブレストkpと精神的つまづきに関する確率表」
http://himajin.diarynote.jp/201105182300072349/
「ブルーカウント? デッキ圧縮? それってホント?」
http://himajin.diarynote.jp/201108262249296306/
の続編で、フェルミ推定を用いてブレストの強さの数値化をしてみようと思います。フェルミ推定については更に別の記事
「ベイズ理論に基づくマリガン基準の問題」
http://himajin.diarynote.jp/201104240333312691/
で軽く解説しましたのでそちらをご覧ください。要するに手掛かりのない未知数を計算する場合に取っ掛かりを与えるための簡単な方法の1つです。もちろんある程度の近似の上で計算する方法なので誤差はそれなりに生じますが、値におおまかな当たりをつけることができる点で重要な手法ですね。
例えば上の記事の中では、ドラゴンストンピィ/Dragon Stompyやベルチャー/Charbelcherを相手にg1を取った青いデッキがg2で(1ターン目に月やベルチャーを置かれると詰むという前提で)後攻マリガンなしの7枚kpしてきた場合に《Force of Will》を握っている確率を具体的に計算しました。青いデッキ側がマリガン時に手札を見てすらいないならWillがある確率は単純に4積みのカードを初手kp出来る確率の40%と一致しますが、そうではなく青いデッキ側のプレイヤーは厳密に確率を計算した上で行動しているとしたらマリガンをしなかったという情報に意味が出るので40%より有意に大きくなってしまうわけですね。その計算法、モデリングの取り方、変数設定の仕方などは人それぞれです。あなたならどのように計算するでしょうか。
さて、表題にも書きましたが今回の着眼点は対コンボでのブレストについてです。もちろんブレスト単体ではコンボ相手に何かできるわけではありません。ブレストの強さは「独楽と同様手札が擬似的に3枚増える」「無駄牌をフェッチで消化できる」「手札破壊から有効牌を守れる」「序盤に土地を探しに行ける」「Willの餌になる」など色々あるでしょうが、中でも今日は「g2以降のデッキパワーが格段に高まる」「サイドボードが適切な枚数で組める」の2点について見ましょう。どちらも「サイドから投入したカードや1枚挿しのカードにアクセスしやすくなる」という特性からくるもので、お互い同じ枚数サイドから対策カードを投入した場合にブレストがあるデッキとないデッキでは確実にブレストがあるデッキのほうが先に対策カードを引けるでしょう。さらにそれを考慮すると1つのアーキタイプに割くべき対策カードを少なめにするというサイド構築も可能になり、複数枚引いたら涙目だけど引けないと困る対策カードを適正枚数に押さえたり幅広いアーキタイプへの対策をしたりできるわけです。要するに「サイドから対策カードを大量に積んだもののサイド後のデッキが変わりすぎて噛み合わなくなり結局弱い動きしかできない」「1枚引けば強いカードを3枚引いて腐って負ける」という私のようなへぼプレイヤーにありがちなサイドボーディングを避けられ、結果的に対コンボ勝率を上げられるような気がしてくるわけですね。
まあ「サイドから投入したカードや1枚挿しのカードにアクセスしやすくなる」なんていうのはわざわざ言われなくても当然のことですので、実際どの程度アクセスしやすくなるかは数値化しないと漠然としか分からないわけです。というわけで「ブレストがデッキに入っているか入っていないかで、サイド後にコンボ対策カードを引ける確率がどのように変動するか」を具体的に計算したいと思います。
まずは次の表をご覧ください。これはゲーム開始時からD枚ドローした時点で60枚のデッキにX枚入っている対策カードに1枚でもアクセスできる確率P%を求めたものです。ただしゲーム開始時に7枚引くのでDは7以上で計算しています。こういうのの計算法は過去の日記に何度か書いてますから気になる方はご参照下さい。
●ケース1:後攻で対ドラゴンストンピィ/Dragon Stompy、ベルチャー/Charbelcher
後攻が先攻1ターン目に妨害できる確率
はい、これは初手の7枚に4積みの《Force of Will》を引ける確率なのでブレストは関係ないですね。何度も記事で取り上げていますように40%です。D=7[ドロー]、X=4[枚]を見ていただければ確かにP=40[%]になっていることが分かりますね。より正確にはWillの餌の有無を考慮して37%です。ブルーカウントが初手のWill成功率にどう影響するかは上の方にリンクを貼ったブルーカウントの記事に記載しましたので気になる方はどうぞ。ちなみにWillがあっても土地がなければkpしないはずですがその辺はブレスト関係無いですし気にしないでおきましょう。参考までに初手の7枚がノーランドである確率は5%、Willが手札に1枚でもある条件下だと7%ちょいですので無視しましょう。
まとめますと、ブレストの有無で妨害成功率の変化は0%です(:3_ )=
●ケース2:先攻で対ドラゴンストンピィ/Dragon Stompy、ベルチャー/Charbelcher
先攻が後攻1ターン目に妨害できる確率
これは初手の7枚にWillかピアスがあるかまたは初手にブレストがあってブレスト経由でWillが引き込める確率です。ケース0と同様、土地がない場合の確率は微々たるものなので無視しましょう。
とりあえずブレストがそもそもデッキに入ってない場合は初手の7枚にWillかピアスがあるかどうかなので、その確率PはWillとピアスの合計枚数をX=4、5、6、7、8[枚]とすればP=40、47、54、60、65[%]です。
ブレストが入っている場合はこれに更に初手の7枚にWillもピアスもなくてかつブレストがありブレストをした結果Willを引き込める確率が加わり、まさにその値こそが「ブレストを投入することで変動する妨害成功率」そのものになるわけです。初手にWillもピアスもない確率は100-P[%]で、さらにブレストがある確率は(100-P)-(初手にWillもピアスもブレストもない確率)であり、初手にWillもピアスもブレストもない確率はX’=X+4=8、9、10、11、12[枚]に対応するP’=65、70、74、78、81[%]を用いて100-P’[%]と書けますから、結局初手にWillとピアスがなくてブレストがある確率は(100-P)-(100-P’)=P’-P=25、23、20、18、16[%]となります。ではブレストが引けているこの状況で、ブレストを打ってWillにアクセスできる確率を考えましょう。これは残りのライブラリー53枚中のトップ3枚に1枚でもWillがある確率なので、これは100-トップ3枚がWill以外の49枚のいずれかである確率=100-100×(49×48×47)/(53×52×51)=21[%]となります。以上から、初手にWillもピアスもなくてブレストがありブレスト経由でWillにアクセスできる確率は(P’-P)×21/100=5、5、4、4、3[%]になります。
まとめますと、ブレストの有無で妨害成功率の変化は3~5%です(:3_ )=
●ケース3:先攻で対アドストーム/ANT
先攻が後攻3ターン目までに妨害できる確率
アドストーム/ANTのコンボスタートは平均3ターン目です。なのでアドストーム/ANTとのマッチを意識したサイド構成にするには先攻なら3ターン目、後攻なら2ターン目までに対策カードにアクセスしたいところですね。特にアドストーム/ANT側からの手札破壊や単純にドロー連打からのライブラリー発掘も考えると、打ち消しを2枚以上構えるかサリアやガドックや法学者のようなボードに置けてクロックにもなるカードを引きこむことが理想的でしょうか。サリアとガドックと法学者はそれぞれ機能が違うので1枚ずつ別々の種類を引けたら心強いですが、同じものを2枚引いてしまうとサリアとガドックについては腐ってしまいますね。そんなことをぶつくさ言っていたら色々な場合分けが生じてしまい計算できるものも計算できなくなってしまうので、とりあえずは対策カードを最低1枚引き込める確率を考えましょう。
まずブレストがない場合は初手7枚と通常ドロー2枚の合計9ドローに対策カードが含まれている確率です。デッキに入っている対策カードの枚数X=1、2、3、4、5、6、7、8[枚]に対してそれをD=9[ドロー]で引き込める確率は上の表からP=15、28、39、49、57、64、70、75[%]になります。
デッキにブレストがある場合はこれに加え、9ドローの中に対策カードは入っていないけどブレストが含まれていてブレスト経由で対策カードにアクセスできる確率を考慮すればいいわけです。ここで3ターン目には2マナ残ってくれないと引いた対策カードも唱えられなかったり色々不都合がありますから、ブレストを3回以上使う可能性は今回は無視しましょう。
相手のキルターンを考慮してブレストを使うタイミングは、2ターン目までに引けていてかつフェッチも握っていたら2ターン目に使ってフェッチも切る、そうでないならば3ターン目のメインに使うということにしましょう。2ターン目にブレストフェッチパッケージを使ってさらにもう1枚ブレストを持っている場合も3ターン目に使うことにします。まず2ターン目までにブレストを引けている確率はX’=4[枚]とD’=8[ドロー]に対応するP’=44[%]です。デッキ内に8枚のフェッチも合わせて引けている確率はブルーカウントの記事を参照していただければ分かるようにおよそ30%になります。つまりブレストありでフェッチなしの確率は14%、ブレストフェッチパッケージありの確率は30%、ブレストなしの確率は56%です。
ブレストありフェッチなしの場合は3ターン目にブレストを使うのでライブラリーへの最終的なアクセス数がD"=9+3-1=11[ドロー]、よって対策カードにアクセスできる条件付き確率はP"=18、34、46、57、65、72、78、82[%]なので妨害成功率への寄与はP"×14/100=3、5、6、8、9、10、11、11[%]です。土地の枚数に関する寄与は今回も無視しています。
ブレストフェッチパッケージありの場合にもう1枚ブレストがある条件付き確率はX’=3[枚]、D’=9+3-1=11[ドロー]に対応する確率P’=46[%]、ブレストフェッチパッケージがあってそれ以上ブレストが引けていない確率は100-46=54[%]です。前者の場合はライブラリーへの最終的なアクセス数がD"=9+3+3-2=14[ドロー]、よって対策カードにアクセスできる条件付き確率はP"=23、42、56、67、75、81、86、90[%]で妨害成功率への寄与はP"×30/100×46/100=3、6、8、9、10、11、12、12[%]、後者の場合はライブラリーへの最終的なアクセス数がD"=9+3-1=11[ドロー]、よって対策カードにアクセスできる条件付き確率はP"=18、34、46、57、65、72、78、82[%]で妨害成功率への寄与はP"×30/100×54/100=3、6、7、9、11、12、13、13[%]です。
ブレストなしの場合は単にD"=9[ドロー]なので、確率P"=15、28、39、49、57、64、70、75[%]で妨害成功率への寄与はP"×56/100=8、16、22、27、32、36、39、42[%]です。
合計するとデッキにブレストが入っている場合の妨害成功率はP=17、32、44、54、62、69、75、79[%]になります。
デッキにブレストが入ってない場合の妨害成功率P=15、28、39、49、57、64、70、75[%]と比較すると、ブレストの有無による妨害成功率の変化は2、4、5、5、5、5、5、4[%]となります(:3_ )=
●ケース4:先攻で対ハイタイド/High Tide、アルーレン/Aluren
先攻が後攻4ターン目までに妨害できる確率
疲れました。
さて、見ての通りせいぜい5%のようです。キルターンの遅くなるハイタイド/High Tideに対してはもう少しましな結果になるでしょうが、どうも序盤の数ターンだけではブレストの有無でそこまで変化しないということでしょうか。
もっと長いターンを戦うことになるアーキタイプとのゲームにおいてはブレストフェッチを複数回行えたりさらに《思案/Ponder》の後押しも加わるのでブレストのカードパワーが飛躍的に上がりますからブレストが強いのは定説通り間違いないでしょう。ゲームを長期化させるコンセプトがあるデッキなら尚更ですね。
あくまで今回の記事はブレストが弱いとかそういうとんでもないことを言っているのではなく、対コンボにおいて相手が平均キルターン通りぶっぱしてくるという前提の下ではブレストのライブラリー発掘能力を過信できないのではないか、という内容です。もちろん青相手にコンボ側が通常と同じ動きをしてくることを期待してはいけませんしブレストを打つだけで心理的なプレッシャーを与えてブラフになるかもしれませんが、とりあえずの単純なモデルの上で近似計算された5%という結果には意味があります。
同様にサイドカードへのアクセスを与える《マグマの噴流/Magma Jet》と《森の知恵/Sylvan Library》も3ターンが目安な対コンボで生きることは稀なのではないでしょうか。
対してフェッチと合わされば早いターンから複数回ライブラリーを覗ける《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》と《ミリーの悪知恵/Mirri’s Guile》はもっとコンボ対策に貢献してくれるでしょう。またコンボ相手の《思案/Ponder》はフェッチがなくてもブレスト以上にライブラリーを掘れてしかも《定業/Preordain》やブレストとの相性は抜群です。なのでカナディアンスレッショルド/Canadian Thresholdのように軽量ドローが豊富なデッキのブレストのカードパワーは特に高く、ブレストの対コンボ勝率貢献は格段に大きいものかもしれませんね。ただしカナディアンスレッショルド/Canadian Thresholdのようにそういった軽量ドローを連打できる「ブレストのカードパワーが特に高いデッキ」はブレストがデッキコンセプトの一角を担ってもいるのでそもそもブレストなしのレシピを考えることができず、ブレストの有無が勝率にどう貢献しているかを定式化する方法論と定式化した上でその数値の計算法がまた難しい問題になるのでその辺は他の方の記事に任せませうヽ(´ー` )ノ
以上です。コンボ対策カードとしてのブレストの強さを改めて数値化してみましたが、予想通りだったでしょうかそれとも意外だったでしょうか。私は少々意外でした。これまではライブラリー発掘カードの有無でコンボ勝率がそれなりに変動すると思っていましたが、少なくともブレストや《マグマの噴流/Magma Jet》を4枚積んだだけでは有意な差がでないのかもしれませんね。
コラム:http://himajin.diarynote.jp/?theme_id=12
名古屋を応援しての特別企画、対コンボにおける《渦まく知識/Brainstorm》の強さを数値で測ろうのコーナーです。長い計算を読むのが嫌いな人は途中を飛ばして各ケースでの結論だけ読むかまたは一番最後の結論まで飛ばして読んで下さい(∪´ω`) 今回のテーマ自体は以前に解説しましたブレストに関する2記事
「1ランドブレストkpと精神的つまづきに関する確率表」
http://himajin.diarynote.jp/201105182300072349/
「ブルーカウント? デッキ圧縮? それってホント?」
http://himajin.diarynote.jp/201108262249296306/
の続編で、フェルミ推定を用いてブレストの強さの数値化をしてみようと思います。フェルミ推定については更に別の記事
「ベイズ理論に基づくマリガン基準の問題」
http://himajin.diarynote.jp/201104240333312691/
で軽く解説しましたのでそちらをご覧ください。要するに手掛かりのない未知数を計算する場合に取っ掛かりを与えるための簡単な方法の1つです。もちろんある程度の近似の上で計算する方法なので誤差はそれなりに生じますが、値におおまかな当たりをつけることができる点で重要な手法ですね。
例えば上の記事の中では、ドラゴンストンピィ/Dragon Stompyやベルチャー/Charbelcherを相手にg1を取った青いデッキがg2で(1ターン目に月やベルチャーを置かれると詰むという前提で)後攻マリガンなしの7枚kpしてきた場合に《Force of Will》を握っている確率を具体的に計算しました。青いデッキ側がマリガン時に手札を見てすらいないならWillがある確率は単純に4積みのカードを初手kp出来る確率の40%と一致しますが、そうではなく青いデッキ側のプレイヤーは厳密に確率を計算した上で行動しているとしたらマリガンをしなかったという情報に意味が出るので40%より有意に大きくなってしまうわけですね。その計算法、モデリングの取り方、変数設定の仕方などは人それぞれです。あなたならどのように計算するでしょうか。
さて、表題にも書きましたが今回の着眼点は対コンボでのブレストについてです。もちろんブレスト単体ではコンボ相手に何かできるわけではありません。ブレストの強さは「独楽と同様手札が擬似的に3枚増える」「無駄牌をフェッチで消化できる」「手札破壊から有効牌を守れる」「序盤に土地を探しに行ける」「Willの餌になる」など色々あるでしょうが、中でも今日は「g2以降のデッキパワーが格段に高まる」「サイドボードが適切な枚数で組める」の2点について見ましょう。どちらも「サイドから投入したカードや1枚挿しのカードにアクセスしやすくなる」という特性からくるもので、お互い同じ枚数サイドから対策カードを投入した場合にブレストがあるデッキとないデッキでは確実にブレストがあるデッキのほうが先に対策カードを引けるでしょう。さらにそれを考慮すると1つのアーキタイプに割くべき対策カードを少なめにするというサイド構築も可能になり、複数枚引いたら涙目だけど引けないと困る対策カードを適正枚数に押さえたり幅広いアーキタイプへの対策をしたりできるわけです。要するに「サイドから対策カードを大量に積んだもののサイド後のデッキが変わりすぎて噛み合わなくなり結局弱い動きしかできない」「1枚引けば強いカードを3枚引いて腐って負ける」という私のようなへぼプレイヤーにありがちなサイドボーディングを避けられ、結果的に対コンボ勝率を上げられるような気がしてくるわけですね。
まあ「サイドから投入したカードや1枚挿しのカードにアクセスしやすくなる」なんていうのはわざわざ言われなくても当然のことですので、実際どの程度アクセスしやすくなるかは数値化しないと漠然としか分からないわけです。というわけで「ブレストがデッキに入っているか入っていないかで、サイド後にコンボ対策カードを引ける確率がどのように変動するか」を具体的に計算したいと思います。
まずは次の表をご覧ください。これはゲーム開始時からD枚ドローした時点で60枚のデッキにX枚入っている対策カードに1枚でもアクセスできる確率P%を求めたものです。ただしゲーム開始時に7枚引くのでDは7以上で計算しています。こういうのの計算法は過去の日記に何度か書いてますから気になる方はご参照下さい。
縦軸D[ドロー]、横軸X[枚]、値P[%]基本的にこの表をベースに計算していきます。今回はブレストの影響がないマリガンについては一切考えずに、ゲーム開始後のドローに関してのみ考察しましょう。また青いデッキなのにブレストが入っていないってことはマーフォーク/Merfolkかフェアリーストンピィ/Faery Stompyでもない限りあまりないことですが、今回はブレストの寄与を計算するために仮想的にそういうデッキを考えています。
\ 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
07 12 22 32 40 47 54 60 65 70 74 78 81
08 13 25 35 44 52 59 65 71 75 79 82 85
09 15 28 39 49 57 64 70 75 79 83 86 89
10 17 31 43 53 61 68 74 79 83 86 89 91
11 18 34 46 57 65 72 78 82 86 89 91 93
12 20 36 49 60 69 75 81 85 89 91 93 95
13 22 39 53 63 72 79 84 88 91 93 95 96
14 23 42 56 67 75 81 86 90 93 95 96 97
●ケース1:後攻で対ドラゴンストンピィ/Dragon Stompy、ベルチャー/Charbelcher
後攻が先攻1ターン目に妨害できる確率
はい、これは初手の7枚に4積みの《Force of Will》を引ける確率なのでブレストは関係ないですね。何度も記事で取り上げていますように40%です。D=7[ドロー]、X=4[枚]を見ていただければ確かにP=40[%]になっていることが分かりますね。より正確にはWillの餌の有無を考慮して37%です。ブルーカウントが初手のWill成功率にどう影響するかは上の方にリンクを貼ったブルーカウントの記事に記載しましたので気になる方はどうぞ。ちなみにWillがあっても土地がなければkpしないはずですがその辺はブレスト関係無いですし気にしないでおきましょう。参考までに初手の7枚がノーランドである確率は5%、Willが手札に1枚でもある条件下だと7%ちょいですので無視しましょう。
まとめますと、ブレストの有無で妨害成功率の変化は0%です(:3_ )=
●ケース2:先攻で対ドラゴンストンピィ/Dragon Stompy、ベルチャー/Charbelcher
先攻が後攻1ターン目に妨害できる確率
これは初手の7枚にWillかピアスがあるかまたは初手にブレストがあってブレスト経由でWillが引き込める確率です。ケース0と同様、土地がない場合の確率は微々たるものなので無視しましょう。
とりあえずブレストがそもそもデッキに入ってない場合は初手の7枚にWillかピアスがあるかどうかなので、その確率PはWillとピアスの合計枚数をX=4、5、6、7、8[枚]とすればP=40、47、54、60、65[%]です。
ブレストが入っている場合はこれに更に初手の7枚にWillもピアスもなくてかつブレストがありブレストをした結果Willを引き込める確率が加わり、まさにその値こそが「ブレストを投入することで変動する妨害成功率」そのものになるわけです。初手にWillもピアスもない確率は100-P[%]で、さらにブレストがある確率は(100-P)-(初手にWillもピアスもブレストもない確率)であり、初手にWillもピアスもブレストもない確率はX’=X+4=8、9、10、11、12[枚]に対応するP’=65、70、74、78、81[%]を用いて100-P’[%]と書けますから、結局初手にWillとピアスがなくてブレストがある確率は(100-P)-(100-P’)=P’-P=25、23、20、18、16[%]となります。ではブレストが引けているこの状況で、ブレストを打ってWillにアクセスできる確率を考えましょう。これは残りのライブラリー53枚中のトップ3枚に1枚でもWillがある確率なので、これは100-トップ3枚がWill以外の49枚のいずれかである確率=100-100×(49×48×47)/(53×52×51)=21[%]となります。以上から、初手にWillもピアスもなくてブレストがありブレスト経由でWillにアクセスできる確率は(P’-P)×21/100=5、5、4、4、3[%]になります。
まとめますと、ブレストの有無で妨害成功率の変化は3~5%です(:3_ )=
●ケース3:先攻で対アドストーム/ANT
先攻が後攻3ターン目までに妨害できる確率
アドストーム/ANTのコンボスタートは平均3ターン目です。なのでアドストーム/ANTとのマッチを意識したサイド構成にするには先攻なら3ターン目、後攻なら2ターン目までに対策カードにアクセスしたいところですね。特にアドストーム/ANT側からの手札破壊や単純にドロー連打からのライブラリー発掘も考えると、打ち消しを2枚以上構えるかサリアやガドックや法学者のようなボードに置けてクロックにもなるカードを引きこむことが理想的でしょうか。サリアとガドックと法学者はそれぞれ機能が違うので1枚ずつ別々の種類を引けたら心強いですが、同じものを2枚引いてしまうとサリアとガドックについては腐ってしまいますね。そんなことをぶつくさ言っていたら色々な場合分けが生じてしまい計算できるものも計算できなくなってしまうので、とりあえずは対策カードを最低1枚引き込める確率を考えましょう。
まずブレストがない場合は初手7枚と通常ドロー2枚の合計9ドローに対策カードが含まれている確率です。デッキに入っている対策カードの枚数X=1、2、3、4、5、6、7、8[枚]に対してそれをD=9[ドロー]で引き込める確率は上の表からP=15、28、39、49、57、64、70、75[%]になります。
デッキにブレストがある場合はこれに加え、9ドローの中に対策カードは入っていないけどブレストが含まれていてブレスト経由で対策カードにアクセスできる確率を考慮すればいいわけです。ここで3ターン目には2マナ残ってくれないと引いた対策カードも唱えられなかったり色々不都合がありますから、ブレストを3回以上使う可能性は今回は無視しましょう。
相手のキルターンを考慮してブレストを使うタイミングは、2ターン目までに引けていてかつフェッチも握っていたら2ターン目に使ってフェッチも切る、そうでないならば3ターン目のメインに使うということにしましょう。2ターン目にブレストフェッチパッケージを使ってさらにもう1枚ブレストを持っている場合も3ターン目に使うことにします。まず2ターン目までにブレストを引けている確率はX’=4[枚]とD’=8[ドロー]に対応するP’=44[%]です。デッキ内に8枚のフェッチも合わせて引けている確率はブルーカウントの記事を参照していただければ分かるようにおよそ30%になります。つまりブレストありでフェッチなしの確率は14%、ブレストフェッチパッケージありの確率は30%、ブレストなしの確率は56%です。
ブレストありフェッチなしの場合は3ターン目にブレストを使うのでライブラリーへの最終的なアクセス数がD"=9+3-1=11[ドロー]、よって対策カードにアクセスできる条件付き確率はP"=18、34、46、57、65、72、78、82[%]なので妨害成功率への寄与はP"×14/100=3、5、6、8、9、10、11、11[%]です。土地の枚数に関する寄与は今回も無視しています。
ブレストフェッチパッケージありの場合にもう1枚ブレストがある条件付き確率はX’=3[枚]、D’=9+3-1=11[ドロー]に対応する確率P’=46[%]、ブレストフェッチパッケージがあってそれ以上ブレストが引けていない確率は100-46=54[%]です。前者の場合はライブラリーへの最終的なアクセス数がD"=9+3+3-2=14[ドロー]、よって対策カードにアクセスできる条件付き確率はP"=23、42、56、67、75、81、86、90[%]で妨害成功率への寄与はP"×30/100×46/100=3、6、8、9、10、11、12、12[%]、後者の場合はライブラリーへの最終的なアクセス数がD"=9+3-1=11[ドロー]、よって対策カードにアクセスできる条件付き確率はP"=18、34、46、57、65、72、78、82[%]で妨害成功率への寄与はP"×30/100×54/100=3、6、7、9、11、12、13、13[%]です。
ブレストなしの場合は単にD"=9[ドロー]なので、確率P"=15、28、39、49、57、64、70、75[%]で妨害成功率への寄与はP"×56/100=8、16、22、27、32、36、39、42[%]です。
合計するとデッキにブレストが入っている場合の妨害成功率はP=17、32、44、54、62、69、75、79[%]になります。
デッキにブレストが入ってない場合の妨害成功率P=15、28、39、49、57、64、70、75[%]と比較すると、ブレストの有無による妨害成功率の変化は2、4、5、5、5、5、5、4[%]となります(:3_ )=
●ケース4:先攻で対ハイタイド/High Tide、アルーレン/Aluren
先攻が後攻4ターン目までに妨害できる確率
疲れました。
さて、見ての通りせいぜい5%のようです。キルターンの遅くなるハイタイド/High Tideに対してはもう少しましな結果になるでしょうが、どうも序盤の数ターンだけではブレストの有無でそこまで変化しないということでしょうか。
もっと長いターンを戦うことになるアーキタイプとのゲームにおいてはブレストフェッチを複数回行えたりさらに《思案/Ponder》の後押しも加わるのでブレストのカードパワーが飛躍的に上がりますからブレストが強いのは定説通り間違いないでしょう。ゲームを長期化させるコンセプトがあるデッキなら尚更ですね。
あくまで今回の記事はブレストが弱いとかそういうとんでもないことを言っているのではなく、対コンボにおいて相手が平均キルターン通りぶっぱしてくるという前提の下ではブレストのライブラリー発掘能力を過信できないのではないか、という内容です。もちろん青相手にコンボ側が通常と同じ動きをしてくることを期待してはいけませんしブレストを打つだけで心理的なプレッシャーを与えてブラフになるかもしれませんが、とりあえずの単純なモデルの上で近似計算された5%という結果には意味があります。
同様にサイドカードへのアクセスを与える《マグマの噴流/Magma Jet》と《森の知恵/Sylvan Library》も3ターンが目安な対コンボで生きることは稀なのではないでしょうか。
対してフェッチと合わされば早いターンから複数回ライブラリーを覗ける《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》と《ミリーの悪知恵/Mirri’s Guile》はもっとコンボ対策に貢献してくれるでしょう。またコンボ相手の《思案/Ponder》はフェッチがなくてもブレスト以上にライブラリーを掘れてしかも《定業/Preordain》やブレストとの相性は抜群です。なのでカナディアンスレッショルド/Canadian Thresholdのように軽量ドローが豊富なデッキのブレストのカードパワーは特に高く、ブレストの対コンボ勝率貢献は格段に大きいものかもしれませんね。ただしカナディアンスレッショルド/Canadian Thresholdのようにそういった軽量ドローを連打できる「ブレストのカードパワーが特に高いデッキ」はブレストがデッキコンセプトの一角を担ってもいるのでそもそもブレストなしのレシピを考えることができず、ブレストの有無が勝率にどう貢献しているかを定式化する方法論と定式化した上でその数値の計算法がまた難しい問題になるのでその辺は他の方の記事に任せませうヽ(´ー` )ノ
以上です。コンボ対策カードとしてのブレストの強さを改めて数値化してみましたが、予想通りだったでしょうかそれとも意外だったでしょうか。私は少々意外でした。これまではライブラリー発掘カードの有無でコンボ勝率がそれなりに変動すると思っていましたが、少なくともブレストや《マグマの噴流/Magma Jet》を4枚積んだだけでは有意な差がでないのかもしれませんね。
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