目次 http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
コラム http://himajin.diarynote.jp/?theme_id=12

言わずと知れたミーハーなので今話題のホーキング氏の論文を読んでみました!悲しいことにネット上では微妙に勘違いで解釈されてるのを散見したので、簡単に従来の宇宙物理学の基礎知識と論文の概要を箇条書きでまとめてみました。とはいっても論文の大部分は共形場理論と量子重力理論及びADS/CFT双対性理論を熟知していることを前提にした難解な物理学なので、私が日記にまとめられるレベルのことは限られますが_(¦3」∠)_
ちなみにHiggs粒子や場の量子論にも興味のある方は以前のコラム(理系でも分かるHiggsのお話 http://himajin.diarynote.jp/201310092057572948/)も参考に!

また科学記事を書くときは毎回断っていてしつこいと思われるかもしれませんが、私はあくまで科学ファンなだけの素人なので初歩的な誤りを含んでいる可能性が存分にあります。検索でたまたま飛んできた人はこの記事の内容を過信しないでくださいლ(´﹏`ლ)


【従来の宇宙物理学の基礎知識】

1.質量にはシュバルツシルト半径と呼ばれる概念があり、その半径の内側では時空間に歪みが生じています。しかし通常の物質は物質の大きさがシュバルツシルト半径より相当大きいので、物質そのものに阻まれてシュバルツシルト半径内部に別の物質が進入することは出来ません。(参考までにシュバルツシルト半径は地球なら1cm程度、太陽なら数km程度です。それぞれの半径よりずっと小さいですね。)

2.物体そのものの密度が非常に高いとき、シュバルツシルト半径の内側にすっぽり物体が入り込んでしまうことがあります。そのような天体をブラックホールと呼びます。(従って天体をブラックホールと言ったときはその中心の質点のことを指したり質点を中心としてシュバルツシルト半径を半径とした球体のことを指したりします。ここでは後者のこととしましょうか。)

3.シュバルツシルト半径の内側に入り込んでしまった情報は外に取り出すことは出来ないと考えられています。これがブラックホールは一度入ると光でさえ抜け出せないと言われる所以でして、ブラックホールの方向を観測するとシュバルツシルト半径の大きさの真っ黒い穴が見えるようになっています。これは背景の天体たちの光がブラックホールの周囲を通る際に地球に到達することなくブラックホールに補足されるからです。(ただし重力レンズ効果というものがあり、ブラックホールの後ろにある光は捻じ曲げられながら地球に到達したりします。)

4.私達が情報を観測できる領域の境界を事象の地平面と言います。例えば地球からものすごい(宇宙年齢×光速)離れた位置にある物質の情報は地球上で観測できない上に、その場所(時々刻々と宇宙年齢が上がっていくので広がっていきます)へ到達することは不可能なので、そういう物質は宇宙の外側にあると表現したりします。逆に宇宙というものを宇宙物理学的には事象の地平面の内側の領域として定義したりもします。(つまりそういう文脈で宇宙の大きさうんぬんというときは宇宙年齢×光速のことだと思えばだいたい問題はないということですね。)

5.宇宙がただの球体ならば事象の地平面はその球面のみということになり話が早いわけですが、ブラックホールの内側も情報が出てこれないのでここも上の意味で「宇宙の外側」であり、ブラックホールの表面も「事象の地平面」なわけです。(これが「ブラックホールは別の宇宙につながっている」というSFチックな表現の元ネタでしょうかね?)

6.地球から到達できないほど遠くにある事象の地平面とブラックホールの表面にある事象の地平面は全く違った存在です。前者は光速で広がって離れていくのでそこを物質が宇宙から逃げて外に出ることが出来ませんが、後者は物質が落ちて行くことが出来ます。ブラックホールに落ちていった物質の情報は元々宇宙に存在していた物質の情報であるのにもかかわらず、もはや取り出すことが出来ません

7.ところが量子論に従うと、宇宙内部の情報が何らかの形で損失することはありません。従ってブラックホールに落ちた物質の情報が失われることは量子論に直接矛盾しているかのように見えます。これを情報パラドックスと呼びます。

8.情報パラドックスを解消するために提唱された仮説の1つが、ファイアウォール理論です。これはブラックホールの表面に高エネルギーが集中しているというもので、この壁によって共形場不変量と呼ばれる不変量が崩れるため何やかんやで理論がうまくいくというものです。共形場理論については割愛なのでこれ以上はしません。(無理です。期待しないで下さい。)これはこれで相対性理論に反していてまだまだ修正が必要な理論です。


【論文の概要】

1.この理論が主張していることはブラックホールの事象の地平面の存在否定です。ナイーブな意味でのブラックホールの存在そのものを否定しているわけではありません。

2.事象の地平面が存在しないということは、地平面上のファイアウォールも存在しませんし地平面内の情報喪失も生じません。これならば量子論とも相対性理論とも矛盾していなさそうに見えますね。

3.この論文の内容について「『ブラックホールが存在しない』という仮説である」というまとめ方をされることがありますが、正確には「『情報の喪失が生じると考えられていた従来のブラックホールのあり方が誤りである』という仮説である」というべきでしょう。前者の表現が一人歩きしておりこれまでの観測結果と相反する理解がネット上で広がっているようです。

4.では情報が失われていないならばそれは観測によって復元可能かというと、現実的には不可能だそうです。論文の言葉を借りつつ表現を補いますと、「理論上は全ての空気中の分子の運動を解析すれば完璧な気象予報が可能であるはずですが、実際は複雑系の解析は困難であるためそれらの情報は失われているように見え、結果的に気象予報は完璧ではありません。それと同じように、ブラックホールへ落ちた物質の情報も様々な因子と混ざり合い複雑系をなしているため、観測による復元は難しい。」という見解のようです。


以上、いかがだったでしょうか?
科学の中でもロマンある分野が好きで特に宇宙が大好物の私にとって、「従来の常識であった事象の地平面の理論が実は正しくないのでは」という示唆を最先端の研究者が提示したことは驚きでなりません。もちろんこれはあくまで仮説であり今後も専門家たちの間で討論されたり様々な実験結果に則って検証されたりしていくでしょうが、こういう新しい風が「奇跡の年」から100年以上たった今でもなお吹き続けるこの宇宙物理学!何と素晴らしいことでしょう。ロマンあふれる理論が新たに提唱されて定着し、1つは廃れまた1つ新しい風が吹く、こういう流れをぼーっと眺めていけることもまた歳を取ることへの楽しみではないでしょうか( : 3 _ )=
目次 http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
確率統計その他まとめ http://himajin.diarynote.jp/201304122133442733/

カードゲームプレイヤーの多くは確率論に準拠した構築やプレイングをしていると思います。しかし確率というのはある程度万能な反面、複雑な状況であればあるほど計算が大変になり全然手に負えないものも多いですよね。そこで確率の代わりに頻繁に使われるのが期待値です。期待値自体は確率を用いて考えられる概念なので一見すると確率が計算出来ないならば期待値も計算出来ないように思ってしまいますが、実際は確率を直接使わずに分布を使うだけで簡単に計算できる点で期待値は非常に優れています。ですから確率計算まではちょっと苦手・・という人でも期待値を考慮して構築する人は相当数いらっしゃるのではないでしょうか。

しかしながら実はこの期待値、かなり多くの頻度で間違った使われ方をされているのです。今回はそういった知っておくと便利な期待値の基本をまとめて
・期待値の計算の仕方
・サンクトペテルブルクのパラドックス
・期待値の向き不向き
・バベルの不安定性と分散
の4つについて解説させていただきます。結構長い記事になりますが、サンクトペテルブルクのパラドックスカード比率が60枚デッキと等しいバベルでも事故が多い理由を両方知っている人なら全然読む必要がない記事です。なお確率というと1で規格化するものと100%で規格化するものの2つがありますが、本質的に違いはないのでここでは1で規格化します。


【期待値の計算の仕方】
まずはそもそも期待値とは何なのかについて復習しましょう。大雑把に言えば、あるイベントにおけるある量Vの期待値Eとは、そのイベントを同じ条件で大量に繰り返した時のVの値の平均値です。例えば60枚のデッキに土地が20枚入っているとして、7枚引いた時の土地枚数を考えるとしましょう。その期待値は、
 (土地0枚の確率)×0
 (土地1枚の確率)×1
 (土地2枚の確率)×2
    :
 (土地7枚の確率)×7
の和です。では(土地2枚の確率)はどうなるかというと、愚直には土地が2枚のパターン数(20!/18!)×(40!/35!)×(7!/2!5!)を考えうる7枚の組み合わせすべてのパターン数(60!/7!53!)で割ったもの。とてもじゃないけど計算は面倒ですね。関数電卓やエクセルや計算ソフトユーザーはそっちの方が便利なのですが、普通の電卓を使う場合はもっとお利口さんに、1枚引くというイベント7回分の対称性をうまく使って
 (20/60)×(19/59)×(40/58)×(39/57)×(38/56)×(37/55)×(36/54)×(7!/2!5!)
と計算するといいでしょう。しかしながらまだまだ計算は時間がかかりそう。期待値を生真面目に確率で計算するのはなかなか大変なのです。そこで代わりの方法として、単に分布を計算するというものがあります。デッキ60枚のうち20枚が土地ならば、デッキ1枚は平均して土地1/3枚分。つまり7枚引けば土地7/3=2.33‥枚分、という計算ができるのです。この計算の方法、改めて考えてみるとそこそこ驚くべきことですが、ちゃんと確率を使ってごりごり計算した結果とまったく同じ値になります。このように、期待値を計算するだけなら分布を用いることで一気にショートカットできるのです

本来は各パターンごとの確率を計算する必要があり、またそれぞれの計算も愚直には1枚引いて何を引く確率、その状態で次の1枚を引いて何を引く確率、その状態で‥と繰り返してちゃんとした確率が分かります。過剰に大げさな言い方をすると、複数のイベントの複数の可変な繰り返しにおける結果の確率をいちいち決定した上でそれらのソースを組み合わせて計算しなくてはいけなかったのが、分布を用いた計算だとデッキ内の最初の分布だけをソースに1回で計算できてしまうのです。1枚引いた後の分布の変化とかを細かく計算する必要もないというなんと楽なものでしょう。


【サンクトペテルブルクのパラドックス】
しかしながら期待値は確率ほどの万能性はありません。上の例は期待値が非常に簡単に計算出来ましたが、本来は複数の確率ソースを組み合わせて計算すべきものをショートカットして最初の分布ソースだけで計算できたということは、実はかなり多くの情報が落ちるような計算であるということです。実際に確率でははっきり分かることなのに期待値を見てしまったら何も分からなくなってしまう極端な例を見ましょう。

いつも仲良しの3人組、たかしくんとたかしまくんとさかしまくんは次のような会話をしています。

たかしまくん「この前貸した《島》20枚返して下さいませんか?」
たかしくん「忘れていました。どうせなら利子ということで25枚返しますよ。」
たかしまくん「いいのですか?ではちょうど23枚欲しかったので23枚でお願いします。」
たかしくん「いやいや25枚あげますよ。これはほんの気持ちです。」
さかしまくん「せっかくですので次のようなゲームで返却枚数を決めるのはどうですか?」

たかしまくんは最初に持ち点が20点あります。まず持ち点から1点単位で好きなだけ点数を賭けます。1点以上の点数を賭けたならば、裏が出るまでコインを振ります。表が出た回数をN回として、たかしまくんは(賭け点)×(2のN-100乗)の点数を得るとしましょう。例えば最初に裏が出たら賭け点の(2の-100乗)しかもらえないので損をします。賭け点の精算が終わったら、また同じ賭けを繰り返すことができます。賭けを繰り返さないことを選ぶか持ち点が1点未満になった場合にゲームは終了し、最終得点の小数点以下を切り捨てた値と同じ枚数だけたかしくんはたかしまくんに《島》を贈呈します。

たかしくん「それ、賭けて得をするには100回より多く表を出す必要がありますから・・誰も賭けませんよね?実質20枚渡すだけでしょう。」
たかしまくん「でも1点賭けて104回勝つと・・20枚が20-1+16で35枚ももらえるんですね。まあありえない話ですが。」
さかしまくん「そうでしょうか?確率は0ではありませんよ?じゃあ期待値で決めてみるのはいかがですか?」
たかしまくん「そうですね、もし万が一このゲームの最終得点の期待値が20を下回らないのでしたらやってみますよ・・。」

さて実際に期待値を計算してみましょうか。といっても賭けをするかしないかはプレイヤー依存の選択なので、1回だけ1点を賭けると決めた上で考えます。裏が出るまでコインを投げて表がN回出る確率はもちろん(2の-N乗)です。というわけで、1回の賭けで得られる点数の期待値は
 (賭け点1)×(2の-100乗)×(2の0乗)=(2の-100乗)
 (賭け点1)×(2の-99乗)×(2の-1乗)=(2の-100乗)
 (賭け点1)×(2の-98乗)×(2の-2乗)=(2の-100乗)
    :
 (賭け点1)×(2の0乗)×(2の-100乗)=(2の-100乗)
 (賭け点1)×(2の1乗)×(2の-101乗)=(2の-100乗)
    :
の無限和、つまり、∞に発散してしまいます。従ってこのゲームで1回だけ賭け点1で賭けた場合の最終得点の期待値は20-1+∞=∞なわけです。何ということでしょう、確率的にはほとんど損をするのに期待値を計算するとごくごく稀な得が積み重なってやり得なゲームという結果になってしまったのです。このように期待値がまるで直感的でない計算結果を生んでしまう現象を、サンクトペテルブルクのパラドックスと言います。この結果自体は期待値が誤りを含む概念であるということを表しているのではなく、人間の心理が1.ごくごく稀な得を完全に0と認識して2.必要以上の得は無意味と考えることが期待値の趣旨とそぐわないというだけのことです。それもそうでしょう。たかしまくんは《島》が23枚あれば十分だと思っているので、気にすべきは23枚以上得られる確率(2の-102乗)の方であって100枚1000枚得ても仕方ないわけです。このように、枚数が増えれば増えるほど1枚の価値が変わっていく場合はその価値を考慮した効用関数というものを考えなければいけない、というのが以前否定論の記事(http://himajin.diarynote.jp/201310072207186169/)で紹介した行動経済学のAllais理論ですね。

たかしまくん「裏が出ました。・・・これで表は120回なので、えーと《島》1048595枚ですね。」
たかしくん「・・市場に出回ってる島の枚数が気になってきますね。」


【期待値の向き不向き】
先程説明した効用関数がまっすぐな直線のグラフを持つ場合、期待値は有意義になりやすいです。これは1枚1枚の価値が何枚目の時点でも同じであると換算したい場合ということですね。もちろんこれは1つの指標でして、かなり雑です。実際にはそういう線形な状況でも期待値はかなり危ないツールになりえます。それはそうとして、その線形な状況のまったく逆を考えましょう。もし効用関数がある値から先0になる場合、期待値の計算はものすごく無駄があることがお分かりでしょうか。つまりこれは、ある程度枚数があった場合はそれ以降の1枚の価値が皆無な状況、すなわち先程のお話での《島》の例などです。効用関数が0になる閾値、つまり必要枚数のゴールがある時点で、ゴールの枚数を得ることとゴール以上の枚数を得ることはイベントとして何ら区別する必要はなく、期待値で平均化するよりゴールに到達できる確率を求めるほうがずっと有意義なのです

例えばMTGの初期ライフは20。ライフゲインがないとすると、20点削るのと40点削るのは同じこと。《ショック》と《稲妻》の差1点は天と地ほどの大きさがありますが、仮に
《すごい火力》 (20)(赤)
インスタント
各対戦相手に100点のダメージを与える。
というカードと
《やばい火力》 (20)(赤)
インスタント
各対戦相手に200点のダメージを与える。
というカードがあってもこの100点差はないも同然なわけです。この無視すべき差も重大な差として考慮してしまうのが期待値であり、ゴール付きの計算でいかに期待値が確率より劣るかが分かると思います。

ゴールがある場合、それを超える値同士の差にはあまり意味がないと書きましたが、逆にゴールを超えない値同士の差にも意味がない状況は多々あります。こんなカードを考えましょう。
《ちょっとすごいショック》 (赤)
インスタント
プレイヤー1人かクリーチャー1体を対象とする。コインを10枚投げ、全て表が出た場合それに20点のダメージを与え、そうでない場合それに2点のダメージを与える。
これと《稲妻》だったらどっちをデッキに入れますか?期待値的にも《ちょっとすごいショック》は2.01点で《稲妻》より劣っていますし、確率的にも0.999で《稲妻》のの方が優れています。なので構築としては期待値・確率ともに《稲妻》の方が優れているカードでしょう。ではプレイング面ではどう変わるでしょうか?あなたの手札に《稲妻》と《ちょっとすごいショック》の2枚があり、マナはもう(赤)しかありません。ターンを返したら負けなので対戦相手に打ちたいのですが、相手のライフは4。こうなると《ちょっとすごいショック》を唱えるほうが正解なことは言うまでもないでしょう。どう見ても弱い《ちょっとすごいショック》が強くなることがあるのは何故か、これを期待値や確率で見ることは難しいですね。では何を計算すればこの《ちょっとすごいショック》のすごさを理解できるのでしょうか?それが期待値と対をなす重要な概念である、分散です。残念なことにMTGプレイヤーにはこの分散を極端に軽視して期待値で計算してしまう人が大多数に見えます。上のような飛躍した例では分散の必要性はわからないかもしれないので、次の重要なお話を見てみましょう。


【バベルの不安定性と分散】
バベル大好きたかしくんと60枚デッキ至上主義のたかしまくんが議論をしています。そこにさかしまくんが現れました。

たかしまくん「強いカード比率を最大限高められる60枚デッキが一番優れていると思います。」
たかしくん「同型再版や役割の近いカードを大量に投じることで、300枚デッキでも60枚デッキとほぼ同じカード比率を実現でき、ライブラリーアウトに強い分バベルのほうが強いと思います。」
さかしまくん「では、カードの4枚制限をなくしたルールならどうでしょうか?」
たかしまくん「それならば60枚とまったく同じカード比率でライブラリーアウトを回避できる300枚の方が強いことは間違いないでしょうね。」
さかしまくん「確かにカード比率が同じならば様々な確率や期待値が同じになります。でも本当にすべてが同じでしょうか?」

実は、記事の冒頭の方に書きましたようにまったく同じカード比率で組んだデッキでも、バベルデッキのほうが格段に事故比率が高まるのです。事故が多いというのは、マナフラッドもマナショートも両方起きやすいということです。それは何故でしょうか?非科学的な根拠やデッキの切りにくさによる偏りなどの問題ではありません。それこそが、分散の寄与なのです。《ちょっとすごいショック》が《稲妻》より勝っていたのは期待値でも確率でもなく、この分散がいい方向に大きかった結果です。ここでは分散の計算の仕方を説明せずに分散の意義を書いていきましょう。

理系向けの譬え話をしましょう。物理に興味が薄いなら数行読み飛ばして下さい。熱力学で使う熱浴という概念をご存知でしょうか。それは温かいプールであって、どんな冷たいものを入れても温度が一定であり続け、時間を賭ければ入れたものが全て熱浴と同じ温度になってしまうという仮想の物体です。なで実在しないかというと、冷たいものを温かいプールに入れれば熱力学の第一法則によってプールが少し冷めるからです。熱浴はプールの体積を無限大だとみなすことで熱容量も無限大に発散させたもので、すなわち十分大きなプールを近似したものなのですね。ライブラリーもプールのようなものです。1枚引いた程度ではあまりライブラリーの構成は変わりませんが、まったく変わらないかといえば嘘になりますね。ですがライブラリーの枚数が増えれば増えるほど、1枚引いた前後でのライブラリーの状態は変わらなくなり、近似してライブラリーの枚数が無限大であると考えると、それは熱浴のようにドローの前後でまったく変化しない存在になります。熱浴のように枚数が無限大のライブラリーであれば、カードを7枚引いた時、1枚目が土地であっても2枚目が土地である確率は変わらず、結局7枚の土地比率がどうなるか、0:7なのか2:5なのか4:3なのか、は初期状態のライブラリー内の土地比率のみから決まる重み付き二項分布になります。初期状態の分布だけで決まるのは期待値と似ていますね。期待値を最初に説明した時に1つのイベントを同じ条件で反復した場合の平均であると強調しましたが、まさにこの無限枚のライブラリーにとって1枚ずつ引いていくというイベントは同じ条件での繰り返しなわけです。対してライブラリーの枚数が有限であり1枚引いた前後の状態変化が無視できない場合、7枚の土地比率はどんどん重み付き二項分布からずれていくのです。どうずれていくかといいますと、期待値に沿った土地比率に近いパターンが出現しやすくなります。一番極端な例だと、ライブラリー枚数が7枚であれば7枚引いた時の土地比率が期待値と完全に一致するパターンしか起きないことが容易に分かりますね。期待値に沿った土地比率に近くなりやすいということは、その分期待値が重要な情報になりやすいということです。つまり、ある量の分散値が低ければ低いほどその量の期待値は信頼のできる指標になります。もちろん先程挙げたような閾値がある場合は期待値の意味が薄れますが、期待値に意味がある状況下では分散が高いかどうかを見ることでその期待値を信用していいかどうかが分かるのですね。

バベルの話に戻ると、デッキ枚数が多ければ多いほど分散値が高くなり初手7枚のカード比率は二項分布に従い、デッキ枚数が少なければ少ないほど初手7枚のカード比率はあまりぶれがなくなります。すなわち、バベルは初手7枚のばらつきが激しく、期待値で予想される平均的な挙動があまり望めないため60枚デッキと同じカード比率でも事故が起きる確率が高いのです。以上のことから、
・デッキが40枚のリミテではカード比率をいつもより重視すべきで、
・デッキが60枚の構築ならカード比率に加えライブラリー操作などによる安定性が活きてきて、
・デッキが99枚のEDHにおいては土地比率をいじってもマナフラッドとマナショートの起きる確率の合計は高く、サーチやドローが重要になる
ということが分かりますね。事故の危険性を考えると安易にデッキ枚数は増やすべきではないのです。とはいってもデッキ枚数の少なさは必ずしも正義ではなく
・サーチしてこそ強いような1枚挿しはデッキ枚数が多ければ多いほど強く、
・デッキ枚数を数枚増やすことで初めて実現できるカード比率もある
ということは十分デッキ枚数を増やす理由になります。60枚デッキを調整した結果土地枚数が24枚では少なく25枚では多いと感じて中間の24.5枚程度にしたい、と思ったならもはや60枚デッキにこだわらずに61枚デッキで25:36で組んでみる価値があります。もちろんそれで分散値が増え望ましい安定性が得られないことは存分に考えられますが、試す価値の無いアイデアではないわけですよね。

分散という概念は事故の多さ・安定性を測ることのできる点で、期待値と大きく性質を異にします。そもそも事故を減らしたいと思うなら土地周りやドロー周りの期待値を調べるだけでは不十分であるにもかかわらず、「3ターン目までに引ける土地枚数の期待値は4枚なのに2枚で止まった、明らかに運がないだけだから仕方ない」と考えてしまってはいないでしょうか?運がないのは確かかもしれませんが、それは期待値に関係ありません。3ターン目に土地を安定して3枚置きたいのでしたら土地枚数を調整して期待値を挙げるのではなく軽量ドロー等を駆使して分散値を下げる方が直接的です。期待値はこういった場面でも過信されている状況が少なくはないのが現状で、そこに警鐘を鳴らすことが大事だと感じました。

分散の意義については理解していただけたでしょうか?分散の計算法は調べれば簡単に分かりますので興味がありましたら調べてみましょう。ですが多くの場合、分散の具体値自体が重要なのではなく分散が多そうだ、少なさそうだという意識を持てることが重要だと思います。これまで期待値を盲信してきた方がいらっしゃるならば、期待値を計算する前に「本当に期待値を信用するに足るほど分散値が少ないかな?」と一度考えていただければというのが今回の記事の一番大きな意図でした。


たかしまくん「なるほど、これからは61枚デッキも試してみようと思います。」
たかしくん「僕もバベルバベルと浮かれていました。少しデッキ構築を見直してみます。」
さかしまくん「じゃあ僕はバベル使います。かぶっていて使うのを敬遠していたんですよね。」
たかしくん「!?」

ひみつ日記でたかしくんたち3人がMTGのルールに立ち向かう連載記事MTGとりびあhttp://himajin.diarynote.jp/201207161549371261/)も合わせてお楽しみ下さい。(宣伝)
目次 http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
筋トレまとめ http://himajin.diarynote.jp/201305292306204376/

誰得コラムが続いていますが私得です_(:Λ」∠)_文章を書くことって気持ちいいですよね。別にストレスがあるわけではありませんがストレス発散のような何かを感じます。

さて久しぶりにダイエットと体作りのための筋トレ入門についてです。前回の記事から既に4ヶ月経っていたとは・・光陰矢のごとしとはこのことですね。ダイエットをする上で気になるのは食事の取り方。食事というのは人生の楽しみの中でも非常に大切なものだと思っています。かくいう私もおいしいものが大好き。ダイエットのために偏食するとか聞くと何を考えているのかとびっくりしてしまいますね。というわけで今回はその食事に関するお話をさせていただきましょう。

ダイエットや体作りを心がける上で意識すべき食事方法や栄養の摂取方法は色々ありますが、とりあえずは
・満腹中枢と血糖値
・低GIダイエットの落とし穴
の2点について解説させていただきます。

:スポーツ科学という分野は日々邁進し続ける領域であり、10年前は正しいと信じられていた理論が既に否定されてしまっているというケースも稀ではありません。私もかなり古くてうろ覚えな知識から引っ張って来ていますので、鵜呑みにせず他の記事などを参照し自分の中で咀嚼することをお勧めします。


【満腹中枢と血糖値】
ダイエットのために体を動かしても、必要以上に熱量を摂ってしまっては本末転倒です。しかし単純に食事制限を行うことは基礎代謝が落ちて痩せにくくなる上に糖新生が始まり筋肉が減っていき脂肪を効率よく代謝できなくなってしまう、ということを最初のエントリー(http://himajin.diarynote.jp/201304122133475323/)で解説させていただきました。できるだけ運動と適切な食事管理を併用すればいいわけです。さて、では適切な食事管理をするためにはどのようなことを気をつければいいでしょうか。

食べ過ぎを回避するためには満腹中枢を刺激しましょう。満腹中枢というのは空腹感・満腹感を与える器官です。満腹中枢が働くトリガーの1つは血糖値です。食事をすると食物に含まれる糖を吸収する過程で血糖値が上がっていくのですが、食事後しばらくすると血糖値はゆっくり通常の値まで下がっていきます。満腹中枢の働きにより、血糖値がある程度低くなると人は空腹感を覚え、血糖値がある程度高くなると人は満腹感を覚えます。

満腹中枢のトリガーは血糖値だけではありません。まず1つは食事開始からの経過時間です。満腹中枢が空腹感を訴えるのをやめて満腹感を滲ませるには食事を初めて20~30分かかると言われています。逆に言うと、この20~30分の間に急激に食物を掻き込んでしまった場合、通常より多く食べた後で満腹感を味わうことになるため食べ過ぎに陥る可能性が高くなります。そして咀嚼回数も1つのトリガーになります。ようするによく噛んで食べることでお腹はいっぱいになりやすい、ということです。これを咀嚼効果と言います。歯ごたえのあるものを食べることで咀嚼回数が増えますし顎の筋肉も健康に保てますが、流動食ばかり食べていると咀嚼回数が著しく乏しくなるためダイエットには不向きなわけです。よく噛んで食べれば自然と食事に時間もかかるため、満腹中枢が働く前に食べ過ぎてしまうというリスクも減らせるので意識したほうがいいでしょうね。

血糖値の話に戻りますと、実は血糖値は脂肪の吸収と深い関わりがあります。先程触れましたように、食事をすると糖が吸収され血糖値が上がります。この血糖値は上がりっぱなしでは人体に有害なわけですが、インシュリンと呼ばれる物質が分泌されることでゆっくり血糖値が下がっていきます。このメカニズムはどのようになっているかというと、まずインシュリンは体内の糖質を優先的にエネルギーに変えようとするのです。無酸素運動・有酸素運動についてのエントリー(http://himajin.diarynote.jp/201305292306241510/)で解説しましたように、糖と脂肪が人体の主なエネルギー源だったわけですが、そこでインシュリンが優先的に糖を代謝しようと働きかけるため、脂肪の消費が結果として抑えられます。それどころか脂肪の蓄積を起こすため、食事により摂取した脂肪分がより吸収されやすくなるのです。というわけで血糖値を高めインシュリンを分泌することは脂肪を効率的に燃焼させたいというダイエットの目的に反することが分かります。血糖値は満腹中枢を刺激する1つのトリガーでしたから満腹感を覚える上では重要なのですが、脂肪を減らすためには上に挙げたような別のトリガーも意識することが大切なわけですね。特に血糖値を高めすぎないためには食事の順番を野菜類→炭水化物(米・パン・芋などの主食系)とすれば、糖の大元である炭水化物を摂取する前に咀嚼回数と食事時間が稼げて血糖値を上げ過ぎることなく満腹感を得ることができると言われています。しかしながら私みたいにご飯が大好きな日本人でしたら炭水化物を後回しにして他の食品を食べるなんてしたくないでしょうね。食事は楽しんでなんぼのものですから、この辺まで徹底するかは好き好きなところ。食事の順番まで気を使うくらいなら私は別の方法を考えますねえ(¦3_ )=


【低GIダイエットの落とし穴】
低GIダイエットという言葉を耳にしたことがありますでしょうか?低GIダイエットがメディアで頻繁に取り上げられるようになって知名度が出てきたのは2000年前後な気がしますが、時が経つに連れてあまり注目されなくなっていき次第に低GIダイエットの危険性や誤謬が指摘されるようになりました。

低GIダイエットとは、食事の種類を制限することでインシュリンの分泌を抑えるというダイエット法です。具体的には米とパンを断って肉類中心の食事をするというものです。米とパンを始めとする炭水化物をなるべく摂取しないことで血糖値の上昇を抑え、インシュリンが分泌されなくなれば脂肪の代謝を促進できる、という理念に基づいたこのダイエット法は「
お肉を食べているのに痩せていく?!
」とメディアで取り上げられそれなりに一世を風靡しました。実際低GIダイエットに挑戦して痩せた人もそこそこいるから話題になったのかもしれませんが、やはり偏食系ダイエットはリスクもあるわけです。

まず炭水化物を断って低血糖を保つこと自体、ホルモンバランスに影響を与えます。また脳が消費できるエネルギーの大部分は炭水化物由来のブドウ糖であると言われており、炭水化物の摂取が滞れば脳の活動レベルも低減する虞があります。まあこういった症状が出るほど低血糖状態を保つようなダイエットはさすがに稀であるにしろ、あまり望ましいベクトルを向かない方向性のダイエットであることが伺えますね。

更に食事が偏ることはそもそも栄養バランスが悪くなります。肉類ばかり摂取してもタンパク質や脂肪が溢れるばかりで特定のミネラルしか摂取できませんし、栄養ではありませんが消化器の正常化に貢献する食物繊維も不足します。同じ種類の食物ばかり選んでいると特定の消化器にばかり負担がかかることになりますし、人間は肉食動物ではなく雑食動物なので消化器自体も肉中心の食生活に向いていません。

それどころか、必ずしも脂肪の代謝が摂取量を上回るとは限りません。そもそもの理念は「インシュリンの分泌抑制により脂肪の代謝を促進しているので、肉類中心の生活をしつつも肉由来の脂肪分をちゃんと消費できる」というものですが、当然脂肪過多な食生活をしつつ日常の基礎代謝・運動量が共に乏しければそもそも摂取した脂肪分をすべて消費してまでエネルギーを生み出す必要がなくなります。脂肪は炭水化物よりも単位重量あたりのカロリーが倍以上大きいので、よりしっかりと運動をしないといけないのです。そして低血糖状態で重負荷の運動をすることは更に血糖値を下げる要因になり低血糖症の危険が増します。インシュリンの分泌抑制及びそれに伴う脂肪代謝促進の効果は個人差がありますので、人によっては大して脂肪が代謝されない可能性もありその場合は普通に糖が消費されてしまうのでこちらも低血糖に拍車をかけてしまいます。と言った感じで色々デメリットや穴のあるダイエット法として今では有名になっているわけなのです。「ダイエットしながらもお肉をいっぱい食べたい」とか言う前にその汚れた心をダイエットしなくちゃいけませんね。


とこんなところで。次回は筋トレのお供、プロテインについて解説しようかと思います。プロテインはダイエット用から体作り用、更に特化したアスリート用など色々ありまして知識もそれなりに必要な代物。どの程度の価格帯のプロテインでどんな選び方をすればいいのか、どのタイミングで飲めばいいのか、そもそもプロテインを飲む必要はあるのか、プロテインを飲むとどんな効果があるのか、気にし出すと色々気になってきちゃいますよね。1回の記事でどの程度解説できるかは分かりませんがプロテイン関連のお話は個人的にも色々好きなテーマなのでなるべく幅広い内容に触れられたらなと思います。
目次 http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/

Higgsうんぬんがメディアを騒がせていますね。しがない科学ファンとしてはこれを機に同類が増えてくれるとまた話が弾んで楽しくなりそうです。Higgsとは何なのかについては多くの報道で取り上げられていると思いますが、そもそもそれが何故重要な概念なのかについてはあまり詳しく述べられていない気がしますね。相変わらず流行りに乗ることが好きな日記ですので、今回はその辺が微妙に分かった気になれるかもしれない記事を書いてみましょう_(:∧」∠)_

言うまでもないと思いますがただでさえ素人なのに日記になるべくすっきりまとめるために厳密な解説は避けて記述しています。ですから過度な信用はしないで下さい。


【場の物理学】
高校までの物理を覚えている人なら、物理といえば粒子の運動や粒子に働く力の釣り合いを頑張って計算する学問という印象があるかもしれません。もちろん高校物理でも電場や磁場が扱われていたと思いますが、試験に出るのはそれらが粒子の運動に与える影響を調べるというもの。場そのものを扱うことは稀だったと思います。

大学レベルの物理になると、今度は粒子に変わってという概念が非常に重要なものとして習うと思います。場とは何かといいますと、考えている空間の各場所pで何らかの値f(p)を持つ関数fのことだと思いましょう。値というのは数だったりベクトルだったり様々です。各場所pというものは座標を用いて数値化できます。ニュートン力学でよく使う3次元空間ならばデカルト座標(x,y,z)や極座標(r,θ,φ)の2通りの表示の仕方があり、表示の仕方を決めてしまえば場fは(x,y,z)の関数f_{xyz}と見たり(r,θ,φ)の関数f_{rθφ}と見たりできます。3次元空間以外にも色々な空間が物理では登場します。位置と速度を両方記述する際に使われる位相空間は6次元デカルト座標(x,y,z,u,v,w)が使われます。特殊相対性理論でよく使われるミンコフスキー空間は4次元デカルト座標(t,x,y,z)で表しますが、一般のモデルにおいてこのような座標という概念を大域的に記述することができませんし、超弦理論にいたっては11次元となりやはり大域座標を持ちません。物理の苦手な人はこの大域的な座標がないということを、空間が1枚の平らな地図に書けないくらいぐにゃぐにゃしている的な意味だと思って下さい。例えば地球儀を地図にする時メルカトル図法なら北極点と南極点を書けませんし、正距方位図法なら対蹠点が書けませんね。だから2次元の平らな地図1枚で地球儀を完全に表すことはできないのですが、代わりに3次元の平らな地図に埋め込んでしまうことは簡単です。しかし高い次元の空間はより大きな次元の平らな空間にも埋め込んでみることができなかったり不思議なことが起きます。

場の基本的な例は電場と磁場と重力場でしょう。これらは説明しなくても何となくの意味は覚えていると思います。これらは全部ベクトルに値を持つ場になりますね。これ以外にはポテンシャル場があります。これはその場所の高さ的なものを表す場なので、数に値を持つ場です。場を座標についての関数だと思った時に、座標を同じ種類のものに取り替えると場の関数としての表示は変わります。例えば直線の上の場fを座標xを用いてf_{x}(x)=xと表せるとき、ガリレイ変換x’=x+1によりx座標をx’座標に取り替えてみるとfの表示はf_{x’}(x’)=x’+1となります。このように座標を取り替えると場の表示が変わったりします。


【場と粒子の相互作用】
場は粒子の運動に影響を与えます。例えば重力場があれば質量のある粒子は重力を受けつつ運動をし、電場があれば電荷のある粒子はクーロン力を受けつつ運動をします。また粒子が運動した結果、その粒子の運動自体が場に影響を与え、近接した未来の場を変えたりもします。例えば電荷のある粒子が運動すると新たな磁場が生じ、磁場の変化が電場を生み、電場の変化が更に磁場を生み、これを無限に繰り返すことで電場と磁場の値が交互にふらふらと振動します。この場の振動のことを電磁波と呼びます。電磁波こそが光の正体でして、それ自身はエネルギーを持ちますが質量も電荷も持たず、ましてや電気タイプで麻痺する技ではありません。このように、場と粒子は互いに影響を与え合うもので、またそれらの相互干渉の結果としてエネルギーを放出したりして空間の状態が変わります。そう考えると粒子自体も場の1つの正体として見えてきて、場も粒子も似通ったものなのかもしれない気がしてきますね。


【運動規則の対称性】
古典的なニュートン力学では、とりあえず粒子の運動が場に与える影響を無視しましょう。ニュートン力学の基本原理の1つはニュートンの運動方程式F=maです。Fは粒子に働く力、mは粒子の質量、aは粒子の加速度ですね。場があれば粒子に力を働かせますし、粒子同士が衝突しても粒子間に力が働きます。それらの合計がFですね。さて、加速度aというものは粒子のデカルト座標xを時間tで2階微分したものでした。つまりaのxによる表示はa_{x}=d^2x/dt^2です。ここでxを再びガリレイ変換x’=x+1により新しい座標x’に取り替えると、aのx’による表示はa_{x’}=d^2(x’-1)/dt^2=d^2x’/dt^2となります。定数ずらしても微分で消えちゃうんですね。つまりaの表示は座標をガリレイ変換しても変わらないというわけです。粒子に働く力Fも時間だけに依存した量ですし、粒子の質量はニュートン力学だと不変です。以上をまとめると、ニュートンの運動方程式F=maの表示は座標をガリレイ変換しても変わらないことが分かりました。こういうことを、「ニュートンの運動方程式のデカルト座標表示はガリレイ変換について対称である」と表現します。このような対称性はいつでも成立するわけではなく、例えばニュートンの運動方程式を極座標で記述した場合、極座標の自然な変換である座標の回転については対称性を持ちません。以上のように運動を記述する規則(ニュートンの運動方程式)・座標の取り方(デカルト座標)・同じ種類の座標の取り替え方(ガリレイ変換)の3つを揃えて初めて綺麗な物理学が記述されるので、それらは切っても切れない関係にあります。

ニュートン力学より高エネルギーの世界を記述する場合、まずは特殊相対性理論が用いられます。特殊相対性理論の世界では粒子の位置を記述する上で立体的位置(x,y,z)だけではなく時間的位置tも必要になり、この4つを合わせて時空間と言います。時空間の最も簡単なモデルがミンコフスキー空間で、そこでは4次元デカルト座標(t,x,y,z)が用いられます。ミンコフスキー空間のこの座標をミンコフスキー計量と呼びましょう。計量というのは距離の概念のことなので本来は違う意味ですが細かいことは忘れましょう。特殊相対性理論の運動方程式や電磁気方程式はこのミンコフスキー計量を用いて簡単に記述され、ローレンツ変換と呼ばれる4次元的な回転による座標の取り替えについて対称になります。逆に特殊相対性理論を綺麗に記述する座標と対称性を与える座標変換はミンコフスキー計量とローレンツ変換の類に限られてしまうため、相対論においてはこれまでのような3次元空間ではなく4次元空間が最低限必要であることが分かります。

運動の規則の対称性を見ることで自然な座標と座標変換が得られ、また運動の規則がどのような対称性を持つか自体が非常に重要な概念であることが伺えましたね。ここで座標変換は座標の表示を変えるものですが、それはガリレイ変換なら原点を平行移動すること、ローレンツ変換ならば視線方向を回転させることに対応し、いずれも空間の見方を変えることになります。これは空間を観測する人が視点や視線を移動させたり距離感を変えたりしただけなのですが、相対的には観測者が止まったまま空間の物理状態が変わったという捉え方ができます。つまりこの解釈に従うと座標変換というのは空間の状態を同じ種類の別の状態に取り替えることであるとみなせます。ものすごい飛躍がありますがこの辺を細かくしていくと非常に長くなるので割愛。


【自発的対称性の破れ】
いよいよHiggs場のお話です。上に挙げた特殊相対性理論までは高校3年生~大学生1年生レベルの簡単な内容なのでざっと読んで理解してもらえるぎりぎりの範疇かもしれませんが、Higgs場のお話をするには大学生3~4年生で学ぶようなgauge理論を説明しなければ細かい部分はよく分からないでしょう。そんなことを日記で解説する技能は私にはありません。専門的なところを抜きにしておおまかな説明で流すことにしましょう。

まず対称性の破れとは何かを例を交えて説明しましょう。色々な例がありますがとりあえず金属の磁性変化が分かりやすいと思います。ある金属分子は低温状態で磁石のような性質を持つとして、これが高温になると金属分子の熱運動が盛んになり磁石の性質を失うとしましょう。高温状態でこの金属分子が敷き詰められている空間を考えると、各々の分子は好き勝手な方向へ振動しており、全体的に見ると等しくランダムな状況になっています。この状態を回転させてもやはり見た目は等しくランダムな振動をしており、この空間は回転に関して対称性を持ちます。しかしこの空間の熱が失われていくと、ある温度から急に金属分子が磁石の性質を持ち、その瞬間すべての分子がN極とS極を揃え、特定の1方向を見るようになります。そうなってしまったらもう回転するとその磁界方向が動いてしまうので、この状態は回転対称性を持ちません。これが温度変化に伴う対称性の破れです。このように、最初は空間に存在していた何らかの変換に対する対称性が物理状態の変化を経て消滅してしまうこと、それが対称性の破れです。

さてgauge理論においてもやはり運動規則と場が存在し、それに適合する座標と座標変換が考察されます。ここで、最も基本的な物理状態は何でしょうか?それは最もポテンシャルの低い状態、つまり真空状態です。一見すると何も存在しないように見える真空は座標変換に対して対称な物理状態。しかし先程の磁性変化の例と同様に、実は真空は非対称な物理状態へと自然に変化してしまいます。これが大雑把な意味での自発的対称性の破れです。この自発的対称性の破れの根源にはgauge理論における場の性質があります。この場を統制する式にこそHiggs場の項が登場し、そしてそれに起因して対称性が破れて真空が真空じゃなくなることで質量が生じるのです。質量とは空間に充満したHiggs場から受ける摩擦のようなもので、宇宙誕生時の真空では摩擦的なものは存在しなかったのに自発的対称性の破れから物理状態が変わるとともに急に摩擦が現れたのです。従来の理論では真空は何も存在しない状態として解釈されていたわけですが、実はHiggs場のような目に見えない何かが真空の空間を占めていてその影響で唐突に質量が生じた、という実に不思議な話ですねえ。ちなみにこの真空への新しい解釈を与えたのは日本人だったりするのです。


以上、ちょっと分かった気になるかもしれない物理の雑学でした(¦3_ )=
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確率・統計・その他まとめ http://himajin.diarynote.jp/201304122133442733/

何やらサルベに怪しい統率者が上がっていますがそれとはまったく関係のない番外編のコラムです。いつもの確率・統計コラムではMTGに関係する事象に絞って詳述させていただきましたが、今回はMTGに限らず一般的な状況に関わるお話。いくつか章立てを細分していますが、記事1つでまるごと1つの内容ですので最後まで読んでくださると幸いです。


【うますぎる話とリテラシー】
昨今はご高齢の方々を狙った詐欺の報告を多く目にし、また地方自治体や警察でも詐欺被害を増やさないよう住宅地へ警鐘を鳴らしに行ったりと苦労が伺えますね。さて、古典的な詐欺の文句として、
 「××に投資をすれば必ず儲かる」
 「次のレースで××に賭ければ確実に当たる」
といったたぐいのいわゆるうますぎる話がありますね。こういう過大誇張の系統はもう既に色々なところで信じてはいけないという念押しを聞いているため、何の疑いも算段もなくこの手の話に乗ってしまう人は少数派になっていると思います。人の話を信じるだけでノーリスクハイリターンを得るようなことは社会において稀であることくらい直感的にも受け入れやすいことですからね。

うますぎる話は疑ってかかれ、という姿勢は大切です。もちろん人を疑うなんて・・という気持ちも分かりますが、損をするのは自分であり時に自身の近縁を巻き込みかねません。うますぎる話でなくとも未知のことに対する新しい情報ならある程度は疑ってかかった方がいいことが多いでしょう。もう古い言葉かもしれませんが、
 「インターネットの情報を鵜呑みにしてはいけない」
という文句も近い含意を持ちますね。10年20年前にはこの言葉をそっくりそのまま体現したメディアリテラシーという概念がよく取り上げられ一種のブームにもなっていたように思います。このように、インターネットが普及する以前からメディア、書物、より卑近には噂話などに対して疑いの目を以って接するべきであるという教えが流布していたわけです。

まあこれが行き過ぎてしまうといわゆるソース厨として忌み嫌われてしまうわけですが。実生活で友達と談笑をしていれば別段根拠のない話に華が咲くこともあるでしょうに、そんな中でインターネット上のように唐突に「その話のソースを提示しなさい」と曰おうものなら空気の読めないネットジャンキーと思われてしまうかもしれませんね。友達との会話で信じようと信じまいと誰も損をしないような話題に関して細かく論拠を追い求める行為は望まれないことが多いのです。過ぎたるは及ばざるが如し。疑ってかかるのはいいですが何人かに経済的損得を与えうる話でないのならほどほどに。


【否定論と懐疑主義】
上に述べたようなことは意識の高い方々なら今更言われるまでもないといったところでしょう。うまい話にはまったく聞く耳を持たないスタンス、根拠を求めるスタンス、リスクを承知した上で片足だけ乗っかってあわよくば利益を得ようというスタンス、といったように盲信せず頭を使った上で様々なスタンスを見せるでしょうね。ここで一応弁解しておきますが、私はうますぎる話に乗るなと言っているのではなく自分なりの考えを持って情報の取捨選択をできるなら結果的にどういう行為に出ようと構わないと思ってます。第三者に損失を負わせない限りは。

さてさて、とりあえずうますぎる話をいったん疑うのはいいことだ、という流れになってまいりました。疑えるという能力を一種のステータスとして得た意識の高い方々は、世間の一般人が信用しそうなものに対しても懐疑的な態度を取れるようになります。そこで次のような情報が舞い込んだとしましょう。
 「××の方法で積み立てるのは賢くない
 「ある程度の理解があれば××はしない
 「××をするのは損だからやめた方がいい
これは非常にそそる文句に見えるかもしれません。こういった情報は意識の高い方々の大好物になりやすい見た目をしています。「世間一般には別段十分な根拠があるわけでもないのに信じられてしまっている××が、実は信用に足るものではなかった!」「なるほど、やはり疑ってかかることは大切だ、情報弱者であれば××に手を出してしまうところを自分は懐疑的な姿勢を持っていたおかげで損をせずにすんだ。」「普通なら信じてしまう××の否定的な意見を持っている自分は情報戦において優位だ。」こんな風に考えるといかにも自分が他より優れた知識を持っている気がしてきますね。

こういった否定的な情報に従ったところで、何もモーションを起こす必要がなければ結果として目に見えた損害をこうむることもないです。それどころか、世間が信用しそうな何かに対して否定的であることはどことなくかっこよさまで覚えるのでしょう。しかし冷静になってみると、最初のように物事を保証する情報を鵜呑みにすることと今のように物事を否定的に捉える情報を鵜呑みにすること、これら2つは本質的に同じであるということにお気付きになるでしょう。違いは後者のほうが一見懐疑的でかっこいい、後者のほうが表面的な不利益を被りにくい、後者のほうがリテラシーに恵まれているように見える、といった程度しかないのです。しかも専門家の意見は後者のスタイルで主張されることが多いのも信じやすさのポイントでしょう。主張する側としても「××をすると確実に損をする」と言った結果問題が生じることは少ないですからね。聴衆が××をした場合、損をしたら言う通りになっただけですし得をしても文句を言う意味が薄いです。逆に聴衆が××をしなかった場合、得をしたら感謝されますし損をしてもやはり文句は言えません。「××をしなければ確実に得をする」と言ったわけではないですからね、運が悪かっただけになるわけです。言い得の典型的テクニックです。

あれだけ懐疑的になるべし、と推しておきながらいざ懐疑的な立場に立ったらそれは盲信と同じですって?じゃあ何が正解なのですか、とおっしゃるかもしれませんね。しかしながら、後者は別に懐疑的な立場に立ったわけではありません。懐疑的であることと、否定論を掲げることはまったくの別物なのです。否定論に盲信的であることはうますぎる話に妄信的になることと比べてリテラシーに何ら優位性はなく、意識の高さを求めるならまず恥ずべき姿勢でしょう。


【否定論からの典型的飛躍】
世間にはかっこいい否定論が溢れています。その多くは正しいかもしれませんし、その多くは間違っているかもしれません。中には悪質なデマが含まれているかもしれません。中には元々正当な主張であったものが少しずつ改変させられて気付かない間に暴論になっているかもしれません。この記事を読んだ多くの人は、さすがに自分はあからさまな否定論を鵜呑みにするわけないとお思いかもしれません。しかし自分に実害のないものは案外賛同してしまうものです。簡単な例を見てみましょうか。
 「タバコは人体に害なので吸うべきではない。」
 「ギャンブルは平均的には散財につながるので娯楽として金銭を捨てられる余裕のある人以外するべきではない。」
 「ボランティアはあくまでボランティアなのでお金をもらうべきではない。」
どれも似通った主張をよく聞きますね。これらの真偽は別として、個別に突っ込みどころがあることにお気付きでしょうか。全体的に否定する対象自体はある程度正当でもその根拠を利己的に曲げてしまっているため結果的に糾弾する相手を納得させられないものになっています。

まずタバコ。吸うべきではないと決めるのは誰でしょうか。「吸いたくない」なら分かります。「吸ってほしくない」も分かります。「健康な体を維持したいのであれば吸うべきではない」も分かります。「喫煙所以外で吸うべきではない」「歩きタバコは条例で禁止されている」「タバコは副流煙が二次被害を生むのでやめて欲しい」・・・こういった主張なら分かります。ただ単に「吸うべきではない」は他者の行為に理不尽に文句を言っているだけですね。駄々をこねて人から権利を取り上げようとするだけであるならばそれは歩きタバコをして何食わぬ顔でポイ捨てしてる人の言い訳と大差ありません。自分には実害のない大多数意見だから賛同する、という人も少なくないのではないでしょうか。大多数かどうかなんて知りませんし自分なりの正義を振りかざすにしても根拠のない歩み寄りもない暴論では誰も納得しませんよね。

次にギャンブル。これもやるやらないは個人の自由。その辺の事情はタバコの場合と同じですので割愛。ですが問題点はもう1つあります。タバコの場合と同様に修正してみるなら例えば
 「ギャンブルは平均的には散財につながるので利益を得たいという目的があるのならばギャンブルをするべきではない。」
といった感じになるでしょうか。もっともな意見に聞こえます。でもこの発言、理由の段階では存在していた可能性というものを帰結の段階で完全に無視していますよね。あくまでギャンブルは損をするものという前提で話をしています。得をすることもあれば損をすることもある。平均的に見て損をすることは間違いないのかもしれませんが、短期的に得をする可能性だってあります。例えばある期間に1万円が必要な人がいたとしましょう。しかし自由に動かせるお金が5000円しかないとします。その人にとって、その期間内に1万円が用意できないならば5000円を残すことも5000円を失うことも大差ないと思える状況だとしましょう。その場合、平均的に損をするであろう賭けで5000円を1万円に変えようとする行為は経済人として適正な経済活動です。これは賭けで残る金額の期待値を直接計算しているのではなく、金額の効用関数を計算していることになります。このような一見非経済的な行動が妥当なものである現象が生じるのは、人の価値観というものが非線形モデル上で意味を持つ概念だからです。いわゆるAllaisの理論やProspect理論ですね。今回は経済学のコラムではないので割愛します。

最後にボランティア。これは非常によく目にする意見ですよね。しかしボランティア活動において活動者が利益を得ることは非常に有意であることが国際関係論などで指摘されています。卑近な意義としては活動者の満足を得られることでボランティア精神に継続性を与えること。またボランティア活動自体が活動者の私財を減耗させる事態を防ぐことでボランティア計画に継続性を与えること。相互利潤をアピールすることで第三者の支援や直接協力を得やすくすること。被ボランティア側と対等な関係を築いていると当事者同士に感じやすくさせることで良好な関係を保持しやすくすること。これを怠ったためにボランティアが開始時の目的を達成する前に瓦解したり、活動者・非活動者のエゴや不満がボランティアを悪い方向に持っていったりなどした例は数多いことでしょう。ですのでこれもかっこいい否定論ではありますが、言い直すならば「ボランティアは継続性を重視しつつも過度な見返りを求めてしまっては本末転倒である」「ボランティアにおいて被活動者が受ける恩恵を遥かに超越した利益を一部の活動者が得る場合、その他の活動者の意欲を削ぎかねないので調整すべきである」といった感じでしょうか。


【ネタバレ】
というわけで「うますぎる話には妄信的になるな」という話から始まり「情報に対してはある程度懐疑的姿勢を持つべきである」という基本スタンスを説明し、結論として「否定論に従うことはうますぎる話に妄信的になることと同じくらいナンセンスである」と説明させていただきました。例として耳障りの良さげ否定論を少し弄ってみたりもしました。全体を通してどうお思いでしょうか。

実は上に書いたことは真っ赤な嘘が含まれています。専門用語とかではなくもっと根本的な理念に意図的な矛盾を孕ませておきました。ですからこの記事に納得出来ないと感じたならば、私の意図に気付いていただけているのかもしれませんね_(:∧」∠)_

否定論にしろ盲信にしろ懐疑にしろ、いずれも日常生活や経済活動やカードゲームその他様々な営みにおいて現れる概念です。今一度自分の考え方、捉え方、姿勢などに注目してみると新しい発見に出会えるかもしれませんね。
目次 http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
筋トレまとめ http://himajin.diarynote.jp/201305292306204376/

その他のコラム
 http://himajin.diarynote.jp/201304122133442733/ MTGで見る確率・統計・その他

最近MTG関連の記事をあまり書いていませんがモダマスは再録カードですし基本セットの[M14]でルーリングの難しそうなカードがポンポン出ることもなさそうですし仕方ありませんね。というわけでダイエットと体作りのための筋トレのコラム第四弾です。前回までで筋トレの基礎理論を解説させて頂きましたので、今回はいよいよ実際に筋トレをするために何をすればいいかを話すため、
・オーバーワーク
・ウォームアップとクールダウン
・ビッグ3
の3点について説明します。ビッグ3はとりあえずなんでもいいから筋トレを始めようとういう方にお勧めできるトレーニングです。

スポーツ科学という分野は日々邁進し続ける領域であり、10年前は正しいと信じられていた理論が既に否定されてしまっているというケースも稀ではありません。私もかなり古くてうろ覚えな知識から引っ張って来ていますので、鵜呑みにせず他の記事などを参照し自分の中で咀嚼することをお勧めします。


【オーバーワーク】
筋トレの原理として以前の記事(http://himajin.diarynote.jp/201305110042407987/)で過負荷の原理について説明させて頂きましたが、その時少しだけ触れましたように実はあまりに強すぎる負荷は逆効果になってしまいます。それは何故でしょう?筋トレにより筋肉に日常生活以上の負荷をかけることで筋繊維を傷つけさせ、それを体の自然な代謝で治すことで以前より強靭な筋肉を得る、これが過負荷の原理でした。しかし筋肉にかける負荷が大きすぎると筋繊維の疲労が激しすぎ、結果として再生後の筋肉が元の筋肉より弱くなってしまうことがあります。また筋肉にかける負荷が適度なものだとしても、毎日のように筋トレをしてしまったりすると筋肉の再生が筋繊維の疲弊に追いつかず、結果として筋トレを繰り返してもどんどん筋肉の総量が減少していってしまうことがあります。このように、「強度とペースを考慮しない筋トレによる超回復の阻害」を受けている状態こそが、いわゆるオーバーワークです。この状態になってしまったら、スポーツ選手であれば疲労が過剰に溜まっているわけで怪我の要因にもなりますし、体作りにしろダイエットにしろせっかく筋トレをしているのに逆効果になるというのでは自己満足にもなりません。ようするに昭和の根性漫画のようにひたすらつらい思いをして体を鍛えればいいという時代ではないのです。

ではどの程度の強度でどの程度の頻度、筋トレを繰り返せばいいのかがきになると思います。とりあえず筋トレの前にウォームアップが必要なのですがそれについては置いておいて後で説明します。まず筋トレというものは基本、「休まずに特定の階数を繰り返す一連の動作」を1セットとし筋トレの種類に合わせて休みつつ数セット行う、というパターンで行われます。筋トレ1セット毎の強度については以前の記事(http://himajin.diarynote.jp/201305110042407987/)で説明しましたように、目的に合わせてMR値を調整するといいでしょう。具体的には筋肥大目的ならMR値を7~12回に収め、筋出力増大目的ならMR値が20~30回以上とし、複合的に行いたいならばそれらの中間的な値を目指すといいでしょう。ここでは筋肥大を目的とした筋トレを中心に話を進めさせて頂きます。1セット行ったら数十秒から数分休憩をし、次のセットに移りましょう。休憩が短すぎると筋肉の短期的な疲労が溜まりすぎていて次のセットに全力で臨むことができなくなりますし、休憩が長すぎると筋肉が運動のことを忘れてもう休息に入ってしまいますね。次のセットには短期的でない疲労が持ち越されているので、筋出力は低下しています。なので同じ運動でもMR値が減少してしまうため、特定のMR値で固定するならば少し軽めの運動に切り替える必要があります。おもりを使ったトレーニングはその点で非常に楽で、例えばある運動が自分にとって最初は100kgのおもりでMR値10回であるとき休憩後は90kgにするとちょうどいい、などと自分の体の調子を前もって数値化して覚えておくことでより適切な強度のトレーニングがこなせます。おもりを使わないトレーニングの場合は2セット目以降の強度コントロールがやや難しいのですが、そこは何度もトレーニングを繰り返していくうちに何となく体が感覚を掴んでいくと思います。、筋肥大を目的とするトレーニングは1つにつき3~5セットを目安にするといいでしょう。3セットで十分すぎるほど体は疲労しますし、5回より多くやっているとMR値10回の強度とウォームアップやクールダウンの強度が大差なくなってしまいます。

1つの筋トレを数セット行ったら後はクールダウンをして終了です。クールダウンの方法については後述します。その日は筋肉の同じ部位を使う筋トレは避けましょう。筋肉の別の部位を使う筋トレでしたらある程度は同日のうちに重ねても大丈夫ですが、筋トレによっては広い部位の筋肉を使用しているのできちんとどの筋トレがどの筋肉を使っているのかは意識しておきましょう。筋トレごとに使う筋肉を強く認識することはイメージトレーニング効果にもつながると言われ、パフォーマンスの向上に貢献します。筋肉というのは狭い範囲にも複数のパーツからなっており、「腕」や「背筋」や「足」のように大雑把な認識ではなく「上腕三頭筋」や「後背筋と脊柱起立筋」や「下腿三頭筋」のように具体的な場所を理解しましょう。筋肉の名称を覚える必要はありませんが、細かい部位をちゃんと把握しておくことが大切です。日常生活でも力の入れ方や姿勢で微妙に使っている筋肉が違うことに気付くと思いますが、どのトレーニングがどの力の入れ方で反応する筋肉の部位に対応しているかを意識しましょう。

そして筋トレを行ったら、次に同じ部位を使う筋トレを行う前に何日か休憩しなくては行けません。どの部位の筋トレが何日間の休息を必要とするかは筋トレごとに依存しますが、大雑把には2・3日あければいいでしょう。ただし筋トレを始めたばかりだったりしばらく怪我で休んでいたりの場合は最初の1回の疲労がかなり重く、4日~1週間程度筋肉痛が続くことがあります。その場合は無理をせず筋肉痛が引いてから次の筋トレに望みましょう。実は毎日やってもいい筋トレもあるのですがそれについてはまた後ほど。


【ウォームアップとクールダウン】
どんな運動でも共通して言えることは、適切なウォームアップとクールダウンが大切だということです。ウォームアップは基本的にパフォーマンスの向上と怪我の予防に寄与し、クールダウンは運動後の疲労回復やトレーニング効果の増大に貢献します。重いおもりを使う都合、軽くでもウォームアップをして怪我の危険性を減らすことは大事ですし、せっかくのトレーニングを最大限活かすためにもクールダウンはしておいた方がいいですね。面倒かもしれませんが筋トレのためのウォームアップとクールダウンは本格的にスポーツをする場合のそれよりは簡単なものでいいのでそれほど時間をとられることはありません。

ウォームアップをするには、まずその日のすべての筋トレを始める前にストレッチをして筋肉と関節を温めましょう。スポーツの場合はウォームアップのストレッチ時に筋肉のバネをよくするためにほんの少しだけ反動をつける方法がありますが、筋トレに関してはそこまで気にする必要がないでしょう。素人がストレッチ時に反動をつけると逆に怪我をしやすくなって危険ですしね。ストレッチが終わったら全体としてのウォームアップは終わりで、次は各筋トレ前の個別のウォームアップです。これは主に筋肥大を目的とした筋トレに必要なことで、まず今からしたい筋トレを非常に軽い強度で10回ほど反復してみましょう。強度の軽さはMR値30以上になるようなもので構いません。急にMR値10程度の運動をすると筋肉が十分温まっていなくて危ないので、そのための前ならしといったところですね。例えば70kgのおもりで何かしようとしているなら40kgくらいで軽く流す感じです。

クールダウンをするには、1つの筋トレを終える前にその筋トレのウォームアップと同じ程度の強度で10回程度反復しましょう。その強度で5回も反復できないようならセット数を減らした方がいいかもしれません。その日のすべての筋トレを終えたらストレッチをしましょう。このストレッチはパフォーマンスの向上を目的としているものではなく筋肉を休めるためのものなので、ウォームアップの時よりもゆっくりじんわり伸ばして行きましょう。


【ビッグ3】
このコラムで扱ってる筋トレの目的は、筋肥大による基礎代謝量のアップでした。効率的に筋肥大を行うには、元々の体積や断面積の大きい筋肉を鍛えるのがいいです。人体で大きい筋肉といえば、1つが大胸筋、もう1つが大腿四頭筋です。また1つの固まった筋肉ではありませんが、背筋系を全部合わせると非常に大きな重量になります。大胸筋を鍛える基本的な筋トレの1つがベンチプレス、大腿四頭筋を鍛える基本的な筋トレの1つがスクワット、背筋系を鍛える基本的な筋トレの1つがデッドリフトです。これら3つの筋トレを総称して、ビッグ3と言います。とりあえずビッグ3をやっておけばかなりの体積の筋肉に影響をあたえることができ、効率的に基礎代謝のアップに繋がりますし大胸筋も大腿四頭筋も背筋も容貌の向上に寄与するため、筋トレをしたいけど何からやろうかわからない人にはこのビッグ3がお勧めです。ただしビッグ3はいずれも100kg前後のおもりを使うため、なるべくは1人でやらずに複数人でやったほうが安全です。また複数人でしかできない効率的なやり方もあるのでそれについてもいつか触れます。ビッグ3は1セットMR値7~12回程度で合計3~5セット、同じ筋トレについては1日やったら最低2日は置いて週に1・2回から多くても3回程度が妥当だと思います。一言にビッグ3と言ってもいろいろな方法があるのですが、ここでは基本的な方法を1つずつピックアップして紹介します。

ベンチプレスは主に大胸筋(肋骨上部に乗っている、胸部の広い筋肉)と上腕三頭筋(二の腕の肘と肩を結ぶラインに伸びている筋肉)を鍛えることができる筋トレです。ベンチプレスのやり方は、長いベンチに仰向けに寝そべり背中をちゃんとつけ、バーベルを肩幅くらいで両手で持ち、それを真上に持ち上げた状態からゆっくり下ろし胸についたら反動を付けずにゆっくり持ち上げる、という動きを繰り返すものです。(絵を描こうと思ったのですが時間がなかったので文章で・・。こんな文章を読むよりどこかで画像や動画を見たほうがいいですね!)すべての筋トレに共通することですが、息を止めずにしっかり吸って吐きましょう。肩幅から広くなるほど大胸筋に掛かる負荷が高まります。運動経験がないならば最初は20~30kgでやるのがいいでしょう。参考までに、何もおもりのついてないバーの重さは10kgや20kgのものが多いです。少し腕力に自身があれば運動未経験者でも男性なら40kgですいすいできると思います。運動経験があれば50~60kgでスタートできるかもしれません。最初は40kgからスタートしても、週2回のペースを守って1・2年間続けていればMR値1回の強度が60~70kgになるでしょう。2年あれば個人差がかなり出るので、人によっては80~120kgに達します。どのくらいの重量まで上げられるようになるかは人それぞれでやってみないと本当に分からないのですが、とりあえずは1年かけて自分の体重を目標にしてみましょう

スクワットは主に大腿四頭筋(太ももを囲うように付いている筋肉)と下腿三頭筋(いわゆるヒラメ筋)と大臀筋(お尻の筋肉)を鍛える筋トレです。スクワットのやり方は、直立した状態で首の後~肩のあたりにバーベルを乗せて、両肩くらいの位置でバーベルを手で押さえ、そのまま背筋を伸ばした状態でゆっくり膝を曲げてお尻を落としていき、お尻と膝の高さが同じくらいになったらまた膝を伸ばして直立した状態に戻す、という動きを繰り返すものです。この時踵が浮かないことと、膝が初期位置より前に移動し過ぎないようにすることを意識して下さい。そこを誤ると思わぬ怪我の原因になります。膝を曲げつつ前に出さないようにするのは難しいのですが、お尻を下ろすときに斜め後ろに突き出すイメージを持つとやりやすいかもしれません。おもりは初めてなら自身の体重の60~80%程度で試してみましょう。ある程度運動経験のある成人男性なら体格に合わせて40~60kgくらいですね。最初の内は首の後にバーベルを置くのがものすごく痛いです。今までそこにそんな重いもの置いたりしませんからね。同時に別のトレーニングで僧帽筋(首の後と両肩と背中の上部を結ぶあたりの筋肉)を軽く鍛えておくことで、僧帽筋にバーを乗せる感じにすれば痛みがなくなってきます。慣れればすぐに体重と同じ大きさで昇降できるようになると思います。スポーツをしている人なら週2回程度のペースをキープ出来れば1・2年程度で100kgを持ち上げられるようになる人も少なくないと思います。人生のうち150kgもあるものを持ち上げたりする動作はスクワットくらいに限られてくるかもしれませんねwとりあえずは1年かけて自分の体重の1.5倍を目標にしてみましょう。この辺の目安はかなり適当です。切りの良い100kgや80kg辺りを目標にしてもいいですし、何にせよ自分のモチベーションを確かめられるようにしましょう。

デッドリフトは脊柱起立筋(背骨の後ろの腰のあたりの筋肉)、大臀筋大腿四頭筋の背部、広背筋(肩甲骨下から腰辺りまでを広く包む筋肉)、僧帽筋など人体の背面の筋肉を幅広く鍛える筋トレです。スクワットと該当部位が重複しているため、スクワットと併用する場合はオーバーワークに注意して下さい。デッドリフトのやり方は、足元にバーベルを置いて足を肩幅に開き、膝を曲げてお尻を斜め後ろに突き出した状態で両手でバーベルを両足首くらいの位置で持ち、背筋と肘を伸ばした状態のまま膝を伸ばしていき、ピンッと直立したら今度はまた背筋と肘を伸ばしたまま膝を曲げていきバーが地面につくすれすれまでお尻を下ろす、という動きを繰り返すものです。ベンチプレスやスクワットと比べて一層文章ではわからなくなってしまったと思いますが、これはそもそも結構難しいトレーニングです。というか私は苦手です。ちゃんとしたフォームを身につけるまでは部活の先輩などに見てもらうといいでしょう。デッドリフトもスクワット同様、踵を上げたり膝を前に出し過ぎないようにしましょう。肘を伸ばした状態で両手にバーを持っておく都合、ついでに握力も必要になるので同時に別のトレーニングで握力も鍛えておくといいです。デッドリフトは握力の有無やボディバランスの良し悪しやフォームの安定感でだいぶやりやすさが変わってしまうため、適正な重さにかなり個人差が出ます。最初はスクワットと同じ重さでやってみるといいと思います。重さが合わないなと思ったら適宜調整しましょう。それだけやりにくい筋トレなのにお勧めとして挙げている理由はやはりその影響範囲の広さです。背面の筋肉全体にトレーニング効果を与えるため、デッドリフトによる筋肥大は基礎代謝の向上に大きく貢献します。体幹の筋肉というものはスポーツをやる上で非常に大切な上、特にカレッジスポーツに多いコンタクトスポーツにとっては怪我を防ぐためにもこういった広く背筋を鍛えられるトレーニングが大切なのです。


と言った感じでオーバーワーク、ウォームアップとクールダウン、そしてビッグ3について解説させて頂きました。今後も他の筋トレの方法や注意点、その他筋トレをする上で知っておいたほうが良い理論などを書いていこうと思います。
目次 http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
筋トレまとめ http://himajin.diarynote.jp/201305292306204376/

その他のコラム
 http://himajin.diarynote.jp/201304122133442733/ MTGで見る確率・統計・その他

身の回りが何だかせわしくまたしてもだいぶ空いてしまいましたが、ダイエットと体作りのための筋トレのコラム第三弾です。前回までで基礎代謝過負荷の原理の理論を用いてダイエットに筋トレが大切なのかを解説させて頂きましたが、今回はダイエットと体作りに筋トレだけでなくジョギングなどの別のタイプの運動も必要である理由を説明するために、
・無酸素運動
・有酸素運動
の2点について説明します。本当に健康的にダイエットや体作りをしたい場合は、筋トレとジョギングという2種類の運動をほどよく織り交ぜていくことが大切なのです。

スポーツ科学という分野は日々邁進し続ける領域であり、10年前は正しいと信じられていた理論が既に否定されてしまっているというケースも稀ではありません。私もかなり古くてうろ覚えな知識から引っ張って来ていますので、鵜呑みにせず他の記事などを参照し自分の中で咀嚼することをお勧めします。


【無酸素運動】
恐らく皆様の多くが有酸素運動無酸素運動という言葉を耳にしたことがあると思います。また漠然と有酸素運動が健康にいいらしいということも有名でしょう。では具体的に、どのような運動が有酸素運動で、どのような運動が無酸素運動なのか、有酸素運動はどのように健康にいいか、無酸素運動は健康に寄与しないのかどうなのか、ご存知でしょうか?

無酸素運動というのは乳酸系無酸素運動と非乳酸系無酸素運動の2種類の総称で、例えば非乳酸系無酸素運動の場合は運動時にエネルギー源としてアデノシン三燐酸と呼ばれる物質を使います。アデノシン三燐酸は生物の体における充電池のようなものとしてよく説明されます。運動時に生物は体内のアデノシン三燐酸を分解し、アデノシン二燐酸とエネルギーを生成します。この機構は体外の酸素の消費を必要せず即効性があり、息を止めている状況でも働くため、無酸素運動と呼ばれるのです。厳密には酸素も電子受容体として体内で活躍しているのですが、その辺はダイエットに関係ないので気になった方はご自身で調べてみましょう。ただし体内のアデノシン三燐酸には限りがあり、すべてアデノシン二燐酸に分解されエネルギーを出し尽くしてしまうと、もうそれ以上このシステムでは新しいエネルギーを生むことができません。ですが運動が終わって暫く休むと今度は体内に余っているエネルギーを使ってアデノシン二燐酸が結合し、アデノシン三燐酸に戻ります。つまりこの化学反応は可逆反応です。このように、体内のエネルギーを必要に応じて取り出せるように蓄えるための物質がアデノシン三燐酸で、まさしく充電池なわけです。


【有酸素運動】
さて、生物のすべての運動はエネルギーを要します。もし無酸素運動によりアデノシン三燐酸が分解されきってしまった場合、それ以上エネルギーを生成できないということは、もうその生物は歩くことさえ出来ないのでしょうか。実際にはそのようなことはなく生物には別の方法でもエネルギーを生み出せるようになっています。それが脂肪や糖の燃焼です。一部の真正細菌や古細菌を除く地球上の多くの生物は呼吸で体外から取り込んだ酸素と体内の炭水化物を結合させ、二酸化炭素等とエネルギーを生み出します。この機構には体外の酸素の消費が必要不可欠であり即効性がなく、息を止めていると働かないため有酸素運動と呼ばれるのです。そして一度酸素と反応して二酸化炭素を放出してしまった体内の炭水化物は、運動が終わっても元通りになりません。つまりこれは不可逆反応なのです。
ここまでの説明でおおよそ何故有酸素運動が大切か分かったと思います。アデノシン三燐酸を用いた無酸素運動は可逆反応で、大局的には運動により体の構成要素が変化しません。対して有酸素運動は不可逆反応で、運動前にあった脂肪などは運動後に戻りません。食事を通じて体内に蓄え直さない限り、脂肪とはおさらばなのです。

では有酸素運動をするにはどうすればいいでしょう。即効性がない有酸素運動でエネルギーを生成するには、短距離走や筋トレのような一時的な運動ではなく、ジョギングや水泳のように長い時間を要する運動をしっかりこなすのです。ちゃんと呼吸をしましょう。水分とミネラルも適度に摂りましょう。ジョギングのつもりが焦ってむやみにダッシュして時間短縮しないようにしましょう。かといって息の全く切れないようなウォーキングにするのではなく、なるべくジョギングのペースを守りましょう。しっかり息を切らしてこその有酸素運動なのです。息が切れるのはつらいですが、酸素が欲しくなるのは脂肪を燃焼させてるからだと思って頑張りましょう。


以上でダイエットのためには筋トレだけでなくジョギング等も大事であることがお分かりいただけたと思います。次回はビッグ3についてお話します。
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ダイエットと体作りのための筋トレ入門のコラムまとめページです。
 http://himajin.diarynote.jp/201310112112355605/ 満腹中枢と血糖値、低GI
 http://himajin.diarynote.jp/201306170000323230/ オーバーワークとアップとBig3
 http://himajin.diarynote.jp/201305292306241510/ 有酸素運動と無酸素運動
 http://himajin.diarynote.jp/201305110042407987/ 過負荷の原理とMR値
 http://himajin.diarynote.jp/201304122133475323/ 基礎代謝と糖新生
目次 http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
筋トレまとめ http://himajin.diarynote.jp/201305292306204376/

その他のコラム
 http://himajin.diarynote.jp/201304122133442733/ MTGで見る確率・統計・その他

少し開いてしまいましたがダイエットと体作りにための筋トレのコラム第二弾です。前回は基礎代謝糖新生という概念を通して何故筋肉をつけることがダイエットと体作りのために大切であるかを説明させていただきましたが、今回は筋肉をつけるためにジョギングなどより優先して筋トレが必要な理由についてです。体作りはともかくダイエットのための運動と聞いてまず連想するのはジョギングや水泳の類が多いと思います。もしくはスポーツが好きな人は球技なり具体的な競技を思い浮かべるかもしれませんね。それらが大切なことはもちろんですが、実は筋肉をつけるための方法としてはジョギングでは不適切で、水泳やスポーツでも筋肉はつきますがその付け方はダイエットや体作りのための合目的的な方法とは言えないのです。やはり筋肉をつけるには筋トレなのです。

というわけで何故筋トレが大切なのか、何故ジョギングでは駄目なのかを学ぶため、
・過負荷の原理
・MR値
の2点について解説します。スポーツや水泳などでの付け方はどのような点で不満があるかについてはまた後ほど。

スポーツ科学という分野は日々邁進し続ける領域であり、10年前は正しいと信じられていた理論が既に否定されてしまっているというケースも稀ではありません。私もかなり古くてうろ覚えな知識から引っ張って来ていますので、鵜呑みにせず他の記事などを参照し自分の中で咀嚼することをお勧めします。


【過負荷の原理】
普段しないような運動をしたとき、普段より重いものを持ったとき、若いうちは翌日までには筋肉痛がくるものです。筋肉痛の正体を考えてみたことはございますでしょうか。実はこの筋肉痛、ダイエットと体作りのための筋トレ人の筋肉が強く生まれ変わることのサインなのです。

日常生活では生じないような強い負荷が筋肉に加わると、筋肉を構成する筋繊維が傷つき一時的に弱まります。傷ついた筋繊維はやがて分解され、この時の刺激で筋肉痛が生じます。そして筋繊維が再生されますが、以前受けた強い負荷に今度は耐えられるようにするために、再生後の筋繊維は分解前のものより少しだけ太くなるのです。このちょっと筋繊維が太くなる現象を超回復と言います。ここで大事なのは、
1.日常で受ける負荷よりも大きい負荷(過負荷)を筋肉が受けないと筋繊維が傷つかない。
2.傷ついた筋繊維がきちんと分解されて再生されないと、筋肉は弱ったまま。
3.再生後の筋繊維は太くなるので、以前と同じ負荷では筋繊維が傷つきにくくなる。
の3点です。特にが重要で、過負荷の原理とはまさしく日常生活ではありえない負荷を筋トレによって筋肉に与えて超回復させるという筋トレの基本メカニズムを指します。また歳を取ると筋肉痛が2日後に来るとかそもそも来ないとか言いますよね。これは老化により人体に自然に備わっていた代謝機能が劣化し、傷ついた筋繊維の分解が遅れたり適切に行われなかったりしているためにそのようなことが起きていて、を踏まえると筋肉痛の来ないような状況での筋トレは筋肉を弱らせるだけの作業になってしまうということです。そうなる前に、若い内から体を作っておいて代謝機能を万全に働かせておくのがいいですね(σ・ω・)σまたについては下でMR値の項目で見させていただきます。

さて、について戻ります。日常で受けることのない負荷を筋肉に与えられればいいなら、ジョギングでもいいのではないかと思うかもしれません。しかしジョギングというのは、筋肉にとって「大きな負荷を与えるもの」ではなく「小さな負荷を長時間与えるもの」なのです。筋繊維を傷つけて初めて超回復が生じることを思い出して下さい。筋繊維を1つの糸のようなものだと思い浮かべていただくと、それを引っ張って切るためには1回の強い力で引きちぎらないといけませんね。糸に張力で釣り合いを保てる程度のほどほどの力を持続的にかけ続けても糸を疲弊させることはできますが、なかなか切ることはできないのです。だからこそ過負荷の原理は筋トレに適用されるものであってジョギングには適用されないのです。もちろんジョギングやスポーツなどは別の理由で大切なのですがその話はまた次回詳しく見ていきましょう。


【MR値】
さて、過負荷の原理を適用するためには日常生活で与えられる負荷より大きな負荷を必要とするということを学びましたね。では具体的にどの程度の負荷が妥当なのでしょうか。負荷が重ければ重いほどいいというわけではなく、昭和のスポコン漫画のように科学せず根性で高負荷なトレーニングを続けることは怪我のリスクを高めるだけではなく、そもそも筋トレ効果の面でも逆効果になりやすいです。極端に重い負荷を受けた筋肉は通常の筋トレよりも多くの本数の筋繊維を傷つけ、中にはひどくぼろぼろになってしまうものもあるでしょう。そうした過度な嗜虐は筋繊維がうまく再生せず、超回復に至らないどころか元の筋肉よりも劣化していることがあるのです。それでは本末転倒、そうならないためにも適切な負荷強度を知っておくのが無難でしょう。

筋トレとは、器具を使うにしろフリーウェイトで行うにせよ、共通することとして特定の運動を繰り返すという行為で成り立っています。そこで、筋トレの負荷強度を示す1つの指標として、「その運動を休まずに何回繰り返せるか」を考えます。これがいわゆるMR値という概念です。例えば同じ腕立て伏せでも、それを30回出来る人にとってはMR=30であり、それを10回しかできない人にとってはMR=10なわけです。ジョギングは1歩進む(または左右合わせて2歩進む)ことが繰り返しの最小単位なわけですが、10歩でリタイアする人は滅多にいないわけで、ジョギングのMR値は桁違いなものになってしまいます。ようするにMR値が小さいものほど運動の強度が高いのです。

ここで、筋トレ効果には大きく分けて2種類あります。1つは筋肥大効果であり、もう1つは筋出力増大効果であります。筋肉が太くなれば当然筋肉は大きな力を生み出せ、筋繊維の太さはそのままでも1本1本の出力が上がればやはり筋肉全体としてより大きな力が出せるようになります。従いましてどちらも筋肉のパフォーマンスを高める効果なわけで似たようなものですが、見た目には全然違います。だって筋肥大するということは筋肉の体積がそもそも大きくなるということですので。筋トレのMR値が適切な範囲で低くなるにつれ、筋繊維は傷つきやすく超回復により太くなりやすくなります。逆にMR値が高くなっていくと、筋繊維はあまり傷つかなくなるので超回復しにくくなり、代わりに反復回数が増えることで筋肉および神経が正確な学習をしやすくなるため結果的に筋繊維1本1本の出力効率が上昇します。そしてMR値があまりに高くなるとジョギングのように正確なMR値が測定できなくなり、そうなるともう筋肥大効果は全く望めず完全に筋出力増大効果に絞られます。もちろん例外的にプロのアスリートが行うような長時間のトレーニングは高MR値にもかかわらず非常に高い負荷を持っていますが、ここで紹介するような一般人の体作りやダイエット向けの運動とは程遠いのでそういった特殊なトレーニングは考えないことにしましょう。

今回はダイエットと体作りを目的としているので筋トレは筋肥大効果を目指すものです。筋肥大効果を得るために適切な筋トレのMR値は最初の内は具体的には7~12を目指すといいでしょう。筋トレに詳しくなったらそれ以外のMR値を色々研究してみるのもいいと思います。筋トレのMR値を細かく調整するにはトレーニング器具を使うことが分かりやすいです。その時々の自分の体に合わせた重さのおもりをつけることでいつでも適切なMR値を実現できますし、トレーニング器具というものは細かい筋肉の部位を正確に意識して設計されているので1回1回の筋トレで鍛えたい筋肉に絞って負荷を加えることができます。もちろん器具を使わないトレーニングでもおもりをちゃんと用意出来れば自分の工夫次第である程度調整が効くので、その辺はお好みで。器具を使わないでかつフリーウェイトのトレーニングを行う場合はMR値を10付近に合わせることが難しいので、その場合はMR=20~30くらいを目安にするといいでしょう。器具を使わないと細かい調整はやはりしにくいのでデータをちゃんと取って各トレーニングと自分のMR値の関係をしっかり把握しておきましょう。特に過負荷の原理の時に説明したを忘れてはいけません。先週までは40kgのおもりでMR値が10だった筋トレも、今では体が強くなって50kg必要になっているかもしれません。特に筋トレを始めたばかりの間は慣れない運動に対し体が急速に学習するので、低いMR値でも高い筋出力増大効果が見られるためトレーニングによっては10kg分も急に変わることなんて珍しくはありません。また本当に最初の最初は筋肉痛も非常に重くなりやすいので無理はせず、MR値も大きめを目安にした方がいいかもしれません。慣れたら自分のペースを掴みましょう。いずれにせよ筋トレをする上では体調管理を怠らず、自分の体の変化に敏感になりましょう。


次回は筋肉をつける手段としてスポーツなどよりも筋トレのほうが今回の目的に合っていることの理由や、だからといって筋トレ以外にもジョギングやスポーツなどが大切な理由を解説させていただきます。
目次 http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
筋トレまとめ http://himajin.diarynote.jp/201305292306204376/

その他のコラム
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新年度も始まりまして皆様ご多忙と思われます。特に大学に入学なさった方々は新しい生活に期待で胸を膨らませているでしょう。人生の大きな節目、ここいらで新しい趣味や習慣を身につけてみるのもいいかもしれませんね。そこで筋トレなんていかがでしょう。
というわけで今回はダイエットと体作りにための筋トレについてのコラムです。まず前提として、ダイエット(主に減量)と体作り(場合によっては増量)の両方に筋トレは大切なのです。

筋トレは体に筋肉をつけてしまい体重を単に落としたいなら逆効果、とか同じ運動をするならジョギング等の有酸素運動大学で脂肪を燃焼させることに専念した方がいい、とか色々な先入観があるかもしれません。しかしそれらは誤りとされており、筋トレは健康なダイエットと切っても切り離せないものであります。
もちろん筋トレはスポーツをする上でも非常に大切です。大学に入り春から体育会系の団体に入った、という方も多いでしょう。大学でのスポーツは高校までより本格的な体作りが求められます。特にカレッジスポーツにはコンタクトスポーツも多く、体作りに対し消極的であったり穿った知識に頼っていたりすると生涯後悔する怪我を負う危険性もあります。多くの場合、同じ団体の先輩方に教わったり大学の講義で初歩を習ったりできますので、2年生になる頃にはそれなりにスポーツ科学を身につけることも出来ます。それでも1年生の早いうちから少しずつ学んでいくに越したことはないでしょう。

体作りに筋肉が必要なのは言うまでもないでしょう。まずは何故筋肉がダイエットにおいて大切かを学ぶため、
・基礎代謝
・糖新生
の2点について解説します。

:スポーツ科学という分野は日々邁進し続ける領域であり、10年前は正しいと信じられていた理論が既に否定されてしまっているというケースも稀ではありません。私もかなり古くてうろ覚えな知識から引っ張って来ていますので、鵜呑みにせず他の記事などを参照し自分の中で咀嚼することをお勧めします。

あと今日回らないお寿司食べました。


【基礎代謝】
皆様も基礎代謝という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。基礎代謝とは、人の体が日常生活で自動的に行っている営み、またはその営みによって消費されていくカロリーのことです。具体的には体温調節や新陳代謝などのことで、これらは生きているだけで勝手に行われます。例えば基礎代謝が少なければ同じ食事量・同じ運動量でもカロリーの余剰が出やすく、基礎代謝が多い人に比べて脂肪を蓄えやすくなってしまいます。実に不公平です。要するに進〇ゼミをやっていない人とやっている人のような差が生じてしまうわけです。

基礎代謝によって消費されるカロリーなんてきっとたかが知れているだろう、と侮ってはいけません。実はダイエットを成功させる鍵の1つがこの基礎代謝なのです。例えばく食事制限のみによるダイエットではよくリバウンドが懸念されます。これは何故かと言いますと、食事制限をしてしばらくすると体は防衛本能から基礎代謝を減らしてしまうからです。基礎代謝が減るとせっかく食事制限をしているのになかなか体重が減らなくなり、しかもダイエットを終えた後もしばらくは基礎代謝が下がったままなので、元の食事量に戻ったとたん体は待ってましたと言わんばかりに脂肪を蓄え始めます。これではダイエット失敗ですね。リバウンドを起こさないためにも、基礎代謝を高く保たないといけません。そこで筋トレです。実は筋肉は人体の中で特に基礎代謝が盛んな部位なのです。細かい計算を抜きにして結果だけ述べますと、筋肉総量が1kg増えることにより加算される基礎代謝量は1年間で5000~20000kcal、単純な脂肪換算では1~3kg前後の減量になります。これはあくまでただ生きているだけで消費される基礎代謝なので、ダイエットをしているならそのダイエット効果にタダで上乗せできるわけで、しかもリバウンドがしにくく見栄えもする健康な体がついてくるということです。
ここで、筋肉をつけて基礎代謝を上げたいなら筋トレをしなくてもジョギングなどだけでいいのでは?と思う人もいるかもしれませんが、それは誤りです。何故誤りなのかを説明するには「過負荷の原理」と「MR値」について説明する必要があります。それについては次回のコラムでお話させていただきます。


【糖新生】
筋トレがダイエットにおいて大切であるもう1つの理由は、糖新生の存在です。生命科学やスポーツ科学に触れたことがないと糖新生という言葉を聞いたことがないかもしれません。糖新生とは貧栄養状態などにおいて筋肉が分解され糖に変わってしまう現象のことです。実はあまり筋肉を使わない生活を続けていると人間の体は筋肉を消費してエネルギーに変えてしまうのですね。筋肉は脂肪よりも密度が高く重いので、食事制限のみによるダイエットをすると最初はこの糖新生により筋肉が減り体重が落ちていきます。しかし思ったより脂肪は減らないので体重計の上で首を傾げることになるでしょう。それどころか先ほど説明したように、筋肉総量が減少することで基礎代謝がなくなり、だんだん痩せにくくなっていく上にリバウンドの危険性が高まっていくわけです。このような失敗を避けるためには、食事制限のみに頼らず筋肉をある程度使った生活を心掛けるのがいいでしょう。そのためにも筋トレやジョギングなどが健康的なダイエットには不可欠なのです。


次回は筋肉をつけるためには何故筋トレが必要なのか、何故ジョギング等だけに頼ってはいけないのかについて解説させていただきます。
目次 http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/

 http://himajin.diarynote.jp/201104240333312691/ (ベイズ理論)
 http://himajin.diarynote.jp/201104302333514699/ (ギャンブラーの罠)
 http://himajin.diarynote.jp/201105141606416993/ (コンコルドの誤り)
カードゲーム関係で有名な諸理論についての解説です。

 http://himajin.diarynote.jp/201105182300072349/
1ランドブレストkpや後攻の精神的つまづきに関する考察です。

 http://himajin.diarynote.jp/201106032126313237/
未解決問題の「無限ループの定義」についてその難しさの片鱗に触れてみました。

 http://himajin.diarynote.jp/201108262249296306/
マリガン、ブルーカウント、デッキ圧縮などについての確率詳細です。

 http://himajin.diarynote.jp/201212082033108342/
対コンボにおけるブレストの貢献を数値化しました。

 http://himajin.diarynote.jp/201310132311394714/
期待値についてのよくある勘違いとかについてまとめました。
目次:http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
コラム:http://himajin.diarynote.jp/?theme_id=12

名古屋を応援しての特別企画、対コンボにおける《渦まく知識/Brainstorm》の強さを数値で測ろうのコーナーです。長い計算を読むのが嫌いな人は途中を飛ばして各ケースでの結論だけ読むかまたは一番最後の結論まで飛ばして読んで下さい(∪´ω`) 今回のテーマ自体は以前に解説しましたブレストに関する2記事
「1ランドブレストkpと精神的つまづきに関する確率表」
 http://himajin.diarynote.jp/201105182300072349/
「ブルーカウント? デッキ圧縮? それってホント?」
 http://himajin.diarynote.jp/201108262249296306/
の続編で、フェルミ推定を用いてブレストの強さの数値化をしてみようと思います。フェルミ推定については更に別の記事
「ベイズ理論に基づくマリガン基準の問題」
 http://himajin.diarynote.jp/201104240333312691/
で軽く解説しましたのでそちらをご覧ください。要するに手掛かりのない未知数を計算する場合に取っ掛かりを与えるための簡単な方法の1つです。もちろんある程度の近似の上で計算する方法なので誤差はそれなりに生じますが、値におおまかな当たりをつけることができる点で重要な手法ですね。
例えば上の記事の中では、ドラゴンストンピィ/Dragon Stompyベルチャー/Charbelcherを相手にg1を取った青いデッキがg2で(1ターン目に月やベルチャーを置かれると詰むという前提で)後攻マリガンなしの7枚kpしてきた場合に《Force of Will》を握っている確率を具体的に計算しました。青いデッキ側がマリガン時に手札を見てすらいないならWillがある確率は単純に4積みのカードを初手kp出来る確率の40%と一致しますが、そうではなく青いデッキ側のプレイヤーは厳密に確率を計算した上で行動しているとしたらマリガンをしなかったという情報に意味が出るので40%より有意に大きくなってしまうわけですね。その計算法、モデリングの取り方、変数設定の仕方などは人それぞれです。あなたならどのように計算するでしょうか。


さて、表題にも書きましたが今回の着眼点は対コンボでのブレストについてです。もちろんブレスト単体ではコンボ相手に何かできるわけではありません。ブレストの強さは「独楽と同様手札が擬似的に3枚増える」「無駄牌をフェッチで消化できる」「手札破壊から有効牌を守れる」「序盤に土地を探しに行ける」「Willの餌になる」など色々あるでしょうが、中でも今日は「g2以降のデッキパワーが格段に高まる」「サイドボードが適切な枚数で組める」の2点について見ましょう。どちらも「サイドから投入したカードや1枚挿しのカードにアクセスしやすくなる」という特性からくるもので、お互い同じ枚数サイドから対策カードを投入した場合にブレストがあるデッキとないデッキでは確実にブレストがあるデッキのほうが先に対策カードを引けるでしょう。さらにそれを考慮すると1つのアーキタイプに割くべき対策カードを少なめにするというサイド構築も可能になり、複数枚引いたら涙目だけど引けないと困る対策カードを適正枚数に押さえたり幅広いアーキタイプへの対策をしたりできるわけです。要するに「サイドから対策カードを大量に積んだもののサイド後のデッキが変わりすぎて噛み合わなくなり結局弱い動きしかできない」「1枚引けば強いカードを3枚引いて腐って負ける」という私のようなへぼプレイヤーにありがちなサイドボーディングを避けられ、結果的に対コンボ勝率を上げられるような気がしてくるわけですね。

まあ「サイドから投入したカードや1枚挿しのカードにアクセスしやすくなる」なんていうのはわざわざ言われなくても当然のことですので、実際どの程度アクセスしやすくなるかは数値化しないと漠然としか分からないわけです。というわけで「ブレストがデッキに入っているか入っていないかで、サイド後にコンボ対策カードを引ける確率がどのように変動するか」を具体的に計算したいと思います。

まずは次の表をご覧ください。これはゲーム開始時からD枚ドローした時点で60枚のデッキにX枚入っている対策カードに1枚でもアクセスできる確率P%を求めたものです。ただしゲーム開始時に7枚引くのでDは7以上で計算しています。こういうのの計算法は過去の日記に何度か書いてますから気になる方はご参照下さい。
縦軸D[ドロー]、横軸X[枚]、値P[%]
\  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
07  12 22 32 40 47 54 60 65 70 74 78 81
08  13 25 35 44 52 59 65 71 75 79 82 85
09  15 28 39 49 57 64 70 75 79 83 86 89
10  17 31 43 53 61 68 74 79 83 86 89 91
11  18 34 46 57 65 72 78 82 86 89 91 93
12  20 36 49 60 69 75 81 85 89 91 93 95
13  22 39 53 63 72 79 84 88 91 93 95 96
14  23 42 56 67 75 81 86 90 93 95 96 97
基本的にこの表をベースに計算していきます。今回はブレストの影響がないマリガンについては一切考えずに、ゲーム開始後のドローに関してのみ考察しましょう。また青いデッキなのにブレストが入っていないってことはマーフォーク/Merfolkフェアリーストンピィ/Faery Stompyでもない限りあまりないことですが、今回はブレストの寄与を計算するために仮想的にそういうデッキを考えています。


●ケース1:後攻で対ドラゴンストンピィ/Dragon Stompyベルチャー/Charbelcher
後攻が先攻1ターン目に妨害できる確率

はい、これは初手の7枚に4積みの《Force of Will》を引ける確率なのでブレストは関係ないですね。何度も記事で取り上げていますように40%です。D=7[ドロー]、X=4[枚]を見ていただければ確かにP=40[%]になっていることが分かりますね。より正確にはWillの餌の有無を考慮して37%です。ブルーカウントが初手のWill成功率にどう影響するかは上の方にリンクを貼ったブルーカウントの記事に記載しましたので気になる方はどうぞ。ちなみにWillがあっても土地がなければkpしないはずですがその辺はブレスト関係無いですし気にしないでおきましょう。参考までに初手の7枚がノーランドである確率は5%、Willが手札に1枚でもある条件下だと7%ちょいですので無視しましょう。

まとめますと、ブレストの有無で妨害成功率の変化は0%です(:3_ )=


●ケース2:先攻で対ドラゴンストンピィ/Dragon Stompyベルチャー/Charbelcher
先攻が後攻1ターン目に妨害できる確率

これは初手の7枚にWillかピアスがあるかまたは初手にブレストがあってブレスト経由でWillが引き込める確率です。ケース0と同様、土地がない場合の確率は微々たるものなので無視しましょう。
とりあえずブレストがそもそもデッキに入ってない場合は初手の7枚にWillかピアスがあるかどうかなので、その確率PはWillとピアスの合計枚数をX=4、5、6、7、8[枚]とすればP=40、47、54、60、65[%]です。
ブレストが入っている場合はこれに更に初手の7枚にWillもピアスもなくてかつブレストがありブレストをした結果Willを引き込める確率が加わり、まさにその値こそが「ブレストを投入することで変動する妨害成功率」そのものになるわけです。初手にWillもピアスもない確率は100-P[%]で、さらにブレストがある確率は(100-P)-(初手にWillもピアスもブレストもない確率)であり、初手にWillもピアスもブレストもない確率はX’=X+4=8、9、10、11、12[枚]に対応するP’=65、70、74、78、81[%]を用いて100-P’[%]と書けますから、結局初手にWillとピアスがなくてブレストがある確率は(100-P)-(100-P’)=P’-P=25、23、20、18、16[%]となります。ではブレストが引けているこの状況で、ブレストを打ってWillにアクセスできる確率を考えましょう。これは残りのライブラリー53枚中のトップ3枚に1枚でもWillがある確率なので、これは100-トップ3枚がWill以外の49枚のいずれかである確率=100-100×(49×48×47)/(53×52×51)=21[%]となります。以上から、初手にWillもピアスもなくてブレストがありブレスト経由でWillにアクセスできる確率は(P’-P)×21/100=5、5、4、4、3[%]になります。

まとめますと、ブレストの有無で妨害成功率の変化は3~5%です(:3_ )=


●ケース3:先攻で対アドストーム/ANT
先攻が後攻3ターン目までに妨害できる確率

アドストーム/ANTのコンボスタートは平均3ターン目です。なのでアドストーム/ANTとのマッチを意識したサイド構成にするには先攻なら3ターン目、後攻なら2ターン目までに対策カードにアクセスしたいところですね。特にアドストーム/ANT側からの手札破壊や単純にドロー連打からのライブラリー発掘も考えると、打ち消しを2枚以上構えるかサリアやガドックや法学者のようなボードに置けてクロックにもなるカードを引きこむことが理想的でしょうか。サリアとガドックと法学者はそれぞれ機能が違うので1枚ずつ別々の種類を引けたら心強いですが、同じものを2枚引いてしまうとサリアとガドックについては腐ってしまいますね。そんなことをぶつくさ言っていたら色々な場合分けが生じてしまい計算できるものも計算できなくなってしまうので、とりあえずは対策カードを最低1枚引き込める確率を考えましょう。

まずブレストがない場合は初手7枚と通常ドロー2枚の合計9ドローに対策カードが含まれている確率です。デッキに入っている対策カードの枚数X=1、2、3、4、5、6、7、8[枚]に対してそれをD=9[ドロー]で引き込める確率は上の表からP=15、28、39、49、57、64、70、75[%]になります。
デッキにブレストがある場合はこれに加え、9ドローの中に対策カードは入っていないけどブレストが含まれていてブレスト経由で対策カードにアクセスできる確率を考慮すればいいわけです。ここで3ターン目には2マナ残ってくれないと引いた対策カードも唱えられなかったり色々不都合がありますから、ブレストを3回以上使う可能性は今回は無視しましょう。

相手のキルターンを考慮してブレストを使うタイミングは、2ターン目までに引けていてかつフェッチも握っていたら2ターン目に使ってフェッチも切る、そうでないならば3ターン目のメインに使うということにしましょう。2ターン目にブレストフェッチパッケージを使ってさらにもう1枚ブレストを持っている場合も3ターン目に使うことにします。まず2ターン目までにブレストを引けている確率はX’=4[枚]とD’=8[ドロー]に対応するP’=44[%]です。デッキ内に8枚のフェッチも合わせて引けている確率はブルーカウントの記事を参照していただければ分かるようにおよそ30%になります。つまりブレストありでフェッチなしの確率は14%、ブレストフェッチパッケージありの確率は30%、ブレストなしの確率は56%です。
ブレストありフェッチなしの場合は3ターン目にブレストを使うのでライブラリーへの最終的なアクセス数がD"=9+3-1=11[ドロー]、よって対策カードにアクセスできる条件付き確率はP"=18、34、46、57、65、72、78、82[%]なので妨害成功率への寄与はP"×14/100=3、5、6、8、9、10、11、11[%]です。土地の枚数に関する寄与は今回も無視しています。
ブレストフェッチパッケージありの場合にもう1枚ブレストがある条件付き確率はX’=3[枚]、D’=9+3-1=11[ドロー]に対応する確率P’=46[%]、ブレストフェッチパッケージがあってそれ以上ブレストが引けていない確率は100-46=54[%]です。前者の場合はライブラリーへの最終的なアクセス数がD"=9+3+3-2=14[ドロー]、よって対策カードにアクセスできる条件付き確率はP"=23、42、56、67、75、81、86、90[%]で妨害成功率への寄与はP"×30/100×46/100=3、6、8、9、10、11、12、12[%]、後者の場合はライブラリーへの最終的なアクセス数がD"=9+3-1=11[ドロー]、よって対策カードにアクセスできる条件付き確率はP"=18、34、46、57、65、72、78、82[%]で妨害成功率への寄与はP"×30/100×54/100=3、6、7、9、11、12、13、13[%]です。
ブレストなしの場合は単にD"=9[ドロー]なので、確率P"=15、28、39、49、57、64、70、75[%]で妨害成功率への寄与はP"×56/100=8、16、22、27、32、36、39、42[%]です。
合計するとデッキにブレストが入っている場合の妨害成功率はP=17、32、44、54、62、69、75、79[%]になります。

デッキにブレストが入ってない場合の妨害成功率P=15、28、39、49、57、64、70、75[%]と比較すると、ブレストの有無による妨害成功率の変化は2、4、5、5、5、5、5、4[%]となります(:3_ )=


●ケース4:先攻で対ハイタイド/High Tideアルーレン/Aluren
先攻が後攻4ターン目までに妨害できる確率

疲れました。


さて、見ての通りせいぜい5%のようです。キルターンの遅くなるハイタイド/High Tideに対してはもう少しましな結果になるでしょうが、どうも序盤の数ターンだけではブレストの有無でそこまで変化しないということでしょうか。

もっと長いターンを戦うことになるアーキタイプとのゲームにおいてはブレストフェッチを複数回行えたりさらに《思案/Ponder》の後押しも加わるのでブレストのカードパワーが飛躍的に上がりますからブレストが強いのは定説通り間違いないでしょう。ゲームを長期化させるコンセプトがあるデッキなら尚更ですね。
あくまで今回の記事はブレストが弱いとかそういうとんでもないことを言っているのではなく、対コンボにおいて相手が平均キルターン通りぶっぱしてくるという前提の下ではブレストのライブラリー発掘能力を過信できないのではないか、という内容です。もちろん青相手にコンボ側が通常と同じ動きをしてくることを期待してはいけませんしブレストを打つだけで心理的なプレッシャーを与えてブラフになるかもしれませんが、とりあえずの単純なモデルの上で近似計算された5%という結果には意味があります。

同様にサイドカードへのアクセスを与える《マグマの噴流/Magma Jet》と《森の知恵/Sylvan Library》も3ターンが目安な対コンボで生きることは稀なのではないでしょうか。
対してフェッチと合わされば早いターンから複数回ライブラリーを覗ける《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》と《ミリーの悪知恵/Mirri’s Guile》はもっとコンボ対策に貢献してくれるでしょう。またコンボ相手の《思案/Ponder》はフェッチがなくてもブレスト以上にライブラリーを掘れてしかも《定業/Preordain》やブレストとの相性は抜群です。なのでカナディアンスレッショルド/Canadian Thresholdのように軽量ドローが豊富なデッキのブレストのカードパワーは特に高く、ブレストの対コンボ勝率貢献は格段に大きいものかもしれませんね。ただしカナディアンスレッショルド/Canadian Thresholdのようにそういった軽量ドローを連打できる「ブレストのカードパワーが特に高いデッキ」はブレストがデッキコンセプトの一角を担ってもいるのでそもそもブレストなしのレシピを考えることができず、ブレストの有無が勝率にどう貢献しているかを定式化する方法論と定式化した上でその数値の計算法がまた難しい問題になるのでその辺は他の方の記事に任せませうヽ(´ー` )ノ


以上です。コンボ対策カードとしてのブレストの強さを改めて数値化してみましたが、予想通りだったでしょうかそれとも意外だったでしょうか。私は少々意外でした。これまではライブラリー発掘カードの有無でコンボ勝率がそれなりに変動すると思っていましたが、少なくともブレストや《マグマの噴流/Magma Jet》を4枚積んだだけでは有意な差がでないのかもしれませんね。
目次:http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
コラム:http://himajin.diarynote.jp/?theme_id=12

最近は全然マジックできてません(っ◞‸◟c) レガシー熱とEDH熱は相変わらずの高まりなので、とりあえず禁断症状が出ないうちに簡単な記事くらいは更新しときます(๑→ܫ←๑)◞ยี่้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้้
モダンはそこまで気乗りしてませんが公式フォーマットはなるべく手を出したいので一応組んでるものの、まだ対人で回してすらないのでレシピ載せるのはまたいつの日かですね。

ちなみについった(http://twitter.com/#!/HimajinPikachu)では元気にぴかちゅうしてますから近況はこちらを(:3_ )=


今回は以前書いた「1ランドブレストkpと精神的つまづきに関する確率表」(http://himajin.diarynote.jp/201105182300072349/)と同じようなノリで、マリガンから始まってブルーカウントやデッキ圧縮などに関して色々役に立つ確率の表を載せました。今回は手抜きなので特に解説はなしで、単純に表と簡単なポイントのみです。


(1) 60枚のデッキに入っている同じ役割のカードX枚のうち1枚以上をM回以内のマリガンで引ける確率P%
縦軸M[回]、横軸X[枚]、値P[%]
\  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
00  12 22 32 40 47 54 60 65 70 74 78 81
01  21 37 50 61 70 76 82 86 89 92 94 95
02  27 47 62 73 81 86 90 93 95 97 98 99
03  32 54 69 79 86 91 94 96 98 98 99 99

まずは基本の数値ですね。除去なりレイラインなりピッチスペルなり初手に欲しいカードを採用するときには無視できない概念です。

1スロット(4枚)をマリガンなしで引く確率はほぼ40%
・1スロット以上入れてる場合、採用枚数1枚を増やすごとにおよそマリガン1回分得。(X枚M回で成功する確率とX+1枚M-1回で成功する確率は大体同じ)
・1スロット以下だとマリガンなしで引く確率は採用枚数1枚増やすごとに8~10%上昇、1スロット以上だと5~7%上昇。
・2スロット入れると3マリでほぼ確実に手札に入る。1スロットでも8割入る。


(2) 63枚のデッキに入っている同じ役割のカードX枚のうち1枚以上をM回以内のマリガンで引ける確率P%
縦軸M[回]、横軸X[枚]、値P[%]
\  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
00  11 21 30 38 46 52 58 63 68 72 76 79
01  20 36 49 59 68 74 80 84 88 91 93 94
02  26 45 60 71 79 85 89 92 95 96 97 98
03  31 52 67 78 85 90 93 96 97 98 99 99

シルバーバレット戦略を取っている場合にデッキが61~63枚になったらどう影響するかです。

ほとんど影響しない。シルバーバレット戦略は4積みのカードを用いたマリガン基準に変化を与えない。(サーチ手段のあるデッキで無理にデッキを60枚にすることは絶対ですか?)
・とは言っても影響は0でないので、サーチ手段があるとか理想の比率にするためには60枚にしたくないとかサイドプランの問題で60枚でない方がサイド後に理想的になるなどといった理由がない限りは60枚デッキにすべき。


(3) 60枚のデッキに入っている同じ役割のカードX枚のうち1枚以上をマリガンなしで後攻Tターン(先攻T+1ターン)以内に引ける確率P%
縦軸T[ターン]、横軸X[枚]、値P[%]
\  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
00  12 22 32 40 47 54 60 65 70 74 78 81
01  23 42 56 67 75 81 86 90 93 95 96 97
02  35 58 73 83 89 93 96 97 98 99 99 99
03  46 71 85 92 96 98 99 99 99 99 99 99

サイド後の対コンボで重要な数値です。レガシーのコンボ基準は2ターンなのでコンボ対策はなるべく2ターン目までに引きたいですね。またハイタイド/High Tideのようなコンボは4ターン目が基準なので、その場合はさらに引き込める確率を多めに見積もれます。

・0ターン目(初手)と2ターン目の差は1スロット付近ならおよそ40%。
・採用枚数が5枚以上なら2ターン目までにおおよそ引ける。(4枚の対策で納得してますか?)


(4) 60枚のデッキに入っている同じ役割のカードX枚のうち1枚以上がマリガンなしの初手の手札に入らなかった場合に、後攻Tターン(先攻T-1ターン)以内に引ける確率P%
縦軸T[ターン]、横軸X[枚]、値P[%]
\  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
01  02 04 06 08 09 11 13 15 17 19 21 23
02  06 11 16 21 26 30 35 39 43 47 50 54
03  11 21 30 38 45 52 58 63 68 72 76 79
04  18 32 45 55 64 71 76 81 85 88 91 93
05  25 45 59 70 78 84 89 92 94 96 97 98

コンボに対していわゆるぬるkpで臨んだ時にコンボ対策を引ける確率です。《渦まく知識/Brainstorm》などを使えば2ターンでも5ターン分のドローにアクセスできることも意識しましょう。

・1スロットあってもドローなしだと2ターンではあまり期待できない。2スロットでも40%以下。(つまりサイド後に対策カードをいっぱい入れたからといって、対策カードも軽量ドローもない手札をkpして通常ドローで引くことを期待するのは危険です。対策カードにスロットをいっぱい割いているならなおさら積極的にマリガンしましょう)
・優良ドローさえあれば、2ターンで引ける確率はそこそこ高い。(2スロットで2ドロー分より1スロットで5ドロー分の方が明らかに引けますね)


(5) ブルーカウントがB枚である60枚のデッキに入っているX枚の《Force of Will》をマリガンなしの初手で1ターン目に構えられる確率P%
縦軸B[枚]、横軸X[枚]、値P[%]
\  01 02 03 04
08  07 14 21 27
12  09 17 25 33
16  10 19 28 36
17  10 20 29 37
18  11 20 29 37
19  11 20 29 38
20  11 21 30 38
22  11 21 30 39
24  11 21 31 39
26  11 22 31 39
30  12 22 31 40
36  12 22 32 40

よく言われるブルーカウントの基準は18~22枚やら16~24枚やらですが、実際に計算するとブルーカウントがどの程度影響するか、よく分かりますね。

16枚と19枚ではほとんど変わらない。16枚と36枚で比べても差はせいぜい4%。(何も考えずにブルーカウントを整えてませんか? 例えばコンボ以外にはサイド後抜く構成のデッキに無理やりブルーカウントを2・3枚増やそうとしてデッキパワーを下げてませんか?)
・もちろんこれは初手の話なので、ゲームの進行中にWillが撃てない状況が発生する確率はブルーカウントごとにもっと変わる。
・「4積みのカードを初手に引く確率」の40%より数%低い。
・Willを1枚増やすごとに初手に撃てる確率は10%上がる。(Will3枚のレシピで納得してますか?)


(6) ゲーム終盤でライブラリー残数40枚の内の土地がX枚として戦場のフェッチランドを切ることで期待されるデッキ圧縮値C(=フェッチランドを切らない場合に引く土地比率-切る場合に引く土地比率)
横軸X[枚]、値C×1000
10 12 14 15 16 18 20
19 18 17 16 15 14 13

十分にマナの出せる状況でのフェッチ起動がどの程度デッキ圧縮に貢献するか、これを見れば明らかですね。圧縮値C(1000倍する前)×フェッチを切ってからの経過ターン数Tで、Tターン以内に得られるカードアドバンテージの期待値を計算できます

・1回フェッチを切った程度では圧縮値はせいぜい0.01~0.02。つまり、続く10ターンで得られるカードアドバンテージの期待値はわずか0.1~0.2枚。(フェッチ3回で《稲妻/Lightning Bolt》1枚分のライフロス。あなたが今しようとしているそのデッキ圧縮は、ライフ圧縮以上にちゃんと意味がありますか?)
・もちろんこれはフェッチを切っても切らなくてもいい場合の計算なので、マナが十分に出ない場合やシャッフルを必要とする場合などはカードアドバンテージ以上にもっと別の重要性がフェッチに付随します。
・自分のキルターンが変わらないならば例え0.01の圧縮率でも重視すべき。(自分のライフ残量を相手のクロック値で割った余りが3以上ならフェッチがキルターンを変えないことは多いでしょう。ただし火力のあるデッキに対しては話は別です)
・裏を返せばそもそも構築の段階でフェッチをデッキに入れることによる土地の実質枚数の減少は、よほど土地を切り詰めてフェッチの比率を多くしてかつ長期戦に持ち込むような状況でない限り無視できる。(ただしフェッチを入れることによりマナの出る土地現物を引ける確率はもちろん下がるので、《もみ消し/Stifle》される危険性や1点ペイのデメリットを考えるとフェッチの採用は計画性が必要です。ライブラリーをシャッフルすることや墓地を肥やすことなど、フェッチそのものの価値があるデッキでフェッチを使いましょう)


さて、今回はブルーカウントにデッキ圧縮など、用語だけ先行してあまり厳密な理論値の知られていない概念について計算してみました。みなさんの予想通りのものだったでしょうか、それとも意外な結果だったでしょうか。色々な常識に対して疑問を投げかけるような書き方をしましたが、これはそれらの否定を目的としたものではありません。私が言わんとしたことは、「自分の大切にしている理論がどういう理由で正しいか、ちゃんと確認したことはありますか?」ということです。もし自分の中に不安なことがあれば、今一度計算してみましょう。単純計算が苦手な人でも、世の中には便利なコンピュータにあふれていますからね_(:3」∠)_
目次:http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
コラム:http://himajin.diarynote.jp/?theme_id=12

ルールがかなり厳密に整備されたマジックにおいても、まだまだ未解決な問題があります。その中で特に有名なのが、「無限ループ」についてでしょう。マジックには「無限のルール」というルールがありますが、そこに言及されている「無限ループ」という概念は未定義のまま残っています。

もちろん「無限ループ」というものを厳密に定義することは理論的に可能でしょうが、ただ厳密に定義するだけでは直感的に理解しにくいものになったり実用上定義としてふさわしくないものになってしまうため、単純に厳密な定義を与えればいいわけではない、というのが大きな問題です。

まあそういう直感的に優れている定義はルール・グルたちが頑張って作っていくものでしょうからここでは置いておいて、今回の日記では直感とか関係なくひたすら厳密に「無限ループ」の定義を追及するだけならどの程度の努力で達成できるのか考え、ルール・グルたちの苦労の片鱗を覗いてみましょう


【準備】
将棋や囲碁の場合はそれは同一の盤面が複数回現れることで「ループ」を定義しますが、マジックでは同様に「ループ」を定義しようとすると失敗します。なぜなら、将棋は駒の種類と数が有限個しかないので盤面の状態が有限パターンしかなかったことに対し、マジックにはライフやカウンターの個数といった非有界な量的概念があるため単純に盤面の状態の個数を数えると無限個になってしまうからです。無限個になると何がいけないかと言いますと、状態が固定されないような「ループ」が存在してしまうことが問題で、例えばある盤面の状態から次の瞬間にはあるパーマネントの上に+1/+1カウンターが1つ乗り、次の瞬間にはさらにもう1つ乗り、これが延々繰り返されるといったように似たような局面が時々刻々と変化しながら永遠に続くという状況が起きるのです。なのでマジックで「ループ」を定義する上では単純に盤面などの同じ状態の反復で定義するだけではいけないわけです。

今回はアルゴリズムのようなものを用いて無限ループというものを記述していこうと思うので、まず初めにマジックにおける「ゲームの状態」をプログラムへの入力として適用できるようにするために、「ゲームの状態」を入力可能な値で翻訳する必要があります。翻訳する、というのは具体的にはマジックにおける「ゲームの状態」をすべて考え、それらは無限個ありますがその無限の大きさが可算的であることを踏まえて、「ゲームの状態」に適当に番号を付けるということをします。

Step 1:ゲーデルの不完全性定理を勉強する
「ゲームの状態」をすべて番号付ける方法のアイデアとして、ゲーデル対応を用います。ゲーデル対応とは、ゲーデルの不完全性定理の証明において自然数論を含む無矛盾な公理系で記述されるすべての命題に番号を付ける方法でして、それと全く同じ方法で「ゲームの状態」に番号を付けることができます。
ゲーデルの不完全性定理に関しては
 ゲーデル 不完全性発見への道 (双書―大数学者の数学) [単行本]
 著者:北田 均 出版:現代数学社

が名著らしいです。読んだことはないですが著者に熱烈なファンが多いようです。

「ゲームの状態」に番号を付ける方法は具体的には以下のような手順で実現されます。まずパーマネントの持ちうる特性や印刷された情報やオーナーなど、マジックのゲームの状態にかかわる情報はパーマネント1つ1つごとには有限種類しかなく各種類ごとに量的なパラメータが可算パターンしかないため、結局1つのパーマネントには可算的な情報量しかありません。なぜ有限種類×可算パターンが可算的になるかと言いますと、それは有限種類の情報に番号を付けて1,…,nとし、各情報1≦i≦nごとに対応しうるパラメータの可算パターンに番号を付けてxi(xi=1,2,3,…)とおくと、i種類目の情報の量的パラメータがxiのときにそのパーマネントの全情報を記述するパラメータX=(p1^x1)(p2^x2)…(pn^xn)という数値を対応させることにより可算パターンのパラメータXを見るだけでiごとのxiが復元できるからです。ただしpiというのは小さい方から数えてi番目の素数で、この復元可能性は自然数の素因数分解の一意性から従います。素因数分解の一意性については
 初等整数論講義 第2版 [単行本]
 著者:高木 貞治 出版:共立出版株式会社

をご参照ください。かなりの名著です。文系の研究者の友人に勧められて読んだものですが、さすが文系の方でもすんなり読んでいただけあって非常に明快に書かれています。

以上より各パーマネントのもつ情報をすべてまとめても可算的な情報しかなく、パーマネントのタイムスタンプ順にパーマネントを番号付けてi番目のパーマネントに対応する情報のパラメータをyiとして、盤面のすべての情報を記述するパラメータY=(p1^y1)(p2^y2)…を計算することでやはり盤面の情報をその数値から復元できます。盤面について以外も手札やライブラリーやサイドボードの情報、そして現在のターン数やこのターンに何回優先権のやり取りをしたかなどのすべての可算的情報を素数を用いて同様に組み合わせることで、マジックの「ゲームの状態」に番号を付けることができますね。


次に、番号付けられた「ゲームの状態」をアルゴリズムに代入してループを記述していきたいので、ループを表すことができる論理体系のモデルを与える必要があります。論理体系のモデルを与えることでその論理体系の定義を与えることになりますが、逆にある論理体系の定義を与えることはモデルを与えていることとは別なので注意をしましょう。まずはモデリングとは何かを知る必要があります。モデリングについて知るには具体的にモデルの例を見ていけばいいわけですが、1つモデルを知ったところですぐに何かわかるわけでもないので、複数のモデルを学びましょう。まずはモデルの大切さと便利さを知るために次を見ていきます。

Step 2:相対性理論を勉強する
相対性理論は非ユークリッド幾何学を用いたモデルで行われる力学体系で、ユークリッド幾何を用いるニュートン力学とは全く異なるモデルを持ちます。よく勘違いされますが相対論が正しいということはニュートン力学が間違っているということではなく、どちらの理論もそのモデル内では正しい論理を展開しています。デカルト座標のガリレイ変換不変性によるモデリングの下で展開されるニュートン力学とミンコフスキー計量空間のローレンツ変換不変性によるモデリングの下で展開される特殊相対性理論を比較することにより、モデリングのイメージがつくでしょう。
相対論については
 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ) [単行本]
 著者:風間 洋一 出版:培風館

が名著らしいです。ちらっとしか読んだことはないですが友達が勧めてました。

Step 3:エリスのABC理論を勉強する
エリスのABC理論は精神疾患というものをより具体的に定義しその原因などを細かく記述するために作られたモデルで、単純な図式の中に多くの利便性が隠れています。モデルを与えて初めて定義でき、モデルを与えて初めて議論でき、モデルを与えて初めて解析できるといういい例ですね。
エリスのABC理論については
 自分のこころからよむ臨床心理学入門 [単行本]
 著者:丹野 義彦 出版:東京大学出版会

が名著です。臨床心理学初心者でもすらすら読めるタッチになっています。

Step 4:論文「Dimensionality and dynamics in the behavior of C. elegans」を読む
「Dimensionality and dynamics in the behavior of C. elegans」はC. elegans(線形動物門双腺綱桿線虫亜綱カンセンチュウ目カンセンチュウ科)の熱刺激に対する反射を画期的なモデリングにより解析した比較的新しい論文です。何の手がかりもなしに反射運動を記述するのは非常に難しいものですが、その各筋肉の長さをプロットすることでC. elegansの体勢というものを数値的に表示させ、熱刺激を線形近似によりその数値に対する1つのオペレーターとして記述するという何とも大胆な発想が特徴的で、これぞモデリング!という感じです。

以上でモデリングの重要性や便利性が分かると思いますが、さらに得たい体系に対するモデリングというものは一意的なではなくあくまで1つの手段であることを意識しないといけません。先に述べたように、論理体系の定義を与えることとモデリングを与えることは違うのです。

Step 5:ユークリッド原論を読む
公理的ユークリッド幾何とデカルト座標による空間幾何の対応は文部科学省のカリキュラムだと中学生の時にやっているはずですが、その対応の意味は中学生の時代には理解できなかったでしょう。ここで改めてユークリッド原論を見直し、公理的ユークリッド幾何もデカルト座標による空間幾何もほぼ同等な「幾何学という論理体系の定義」を与える2つの相異なるモデリングであることを確認しましょう。

Step 6:量子論を勉強する。
量子論もモデリングが多様であることが有名な学問です。ヒルベルト空間論に基づくモデリングや、物理量の演算子による実現を用いたモデリングを比較し、複数の相異なるモデリングが1つの同等な論理体系を与えることを確認しましょう。
量子論については
 量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために (新物理学ライブラリ) [単行本]
 著者:清水 明 出版:サイエンス社

が名著です。割とおちゃらけムードで書かれた本ですが、その分親しみやすくすらっと読めるでしょう。

以上でモデリングを与えることと論理体系の定義を与えることの本質的な違いが垣間見えたことでしょう。


【無限ループのモデリング】
では実際に「無限ループ」をモデリングしましょう。まずは簡単な場合、選択的でないループのモデリングです。

Step 7:チューリング・マシンによるモデリング
前項で「ゲームの状態」に番号を付けることができたので、チューリング・マシンへの入力として「ゲームの状態」を考えることができます。「選択的」でないことは定義可能であり「選択的」でないゲーム進行は状況起因処理や誘発型能力の誘発および双方の優先権のパスに伴う呪文や能力の解決など、これも有限個の種類しかありません。従ってそれぞれに番号付けることが可能で、対応する命令をプログラムすることでチューリング・マシンを構成できます。「選択的でない無限ループ」というものを、このチューリング・マシンが停止しないこととして定義しましょう。ただしチューリング・マシンの停止性の判定はアルゴリズムが存在しませんが、個々のテープに対する停止性は決定可能なのでこれでちゃんと定義できています。

さらに選択的であるループもモデリングしましょう。

Step 8:非決定的離散時間マルコフ過程によるモデリング
「選択的」であるようなゲーム進行はある「ゲームの状態」から次の瞬間には複数の「ゲームの状態」に移行することが可能です。その移行は非決定的であるため特定のアルゴリズムの下で命令として処理することができないため、よりモデルを広くして非決定的離散時間マルコフ過程を用いましょう。つまり各ゲーム進行というものを状態の遷移に対応させることで、「選択的ループ」というものをこの非決定的離散時間マルコフ過程が停止する遷移パターンを持たないこととして定義できるのです。

以上により「無限ループ」というものが定義されました。気をつけなくてはいけないのは各「ゲームの状態」に番号を割り振ったことやチューリング・マシンによるモデリングをしたことはマジックの総合ルール内で記述される概念ではなく明らかにメタ言語の下で記述されたものであるということです。基本的であるがゆえに記述の難しいものを定義するうえではメタ言語の介入を避けることは難しいので仕方ないことでしょう。

気にしなくてはいけないことは、この定義の中で将棋でのループの場合と違って同一局面の反復について一切触れていないということです。しかしながらこれは将棋での定義の一般化になっており、それは有限個のパターン内で無限回パターンの選択をした場合にBolzano-Weierstrass theoremまたは鳩の巣原理により同一局面の反復が自動的に行われるからです。それに目を付けた自然な拡張として今回は「無限ループ」という状態をマジックの「ゲームの状態」たちに形式的に加えたいわゆるcompactificationと呼ばれる手法を使うことでBolzano-Weierstrass theoremが同様に適用できる状況にしただけなのです。


【最後に】
このような論理を展開しても、ほつれがあっては意味がありません。もし第三者に「でもその論理が正しいことはどうやって証明するの?」と言われた場合に困ってしまうのは不都合がありますね。そこで理論を完結させるために便利な方法があります。

Step 9:ゲーデルの不完全性定理を復習する
もし誰かに論理の整合性の証明を問われたら、こう言いましょう。
 「自然数論を含むいかなる公理系はそれが無矛盾である限り自己の無矛盾性を証明できない
これはゲーデルの不完全性定理の主張ですが、簡単に言うと「私の論理に矛盾がない以上、自分の論理の整合性を証明する手段はありません。なぜなら、もし自分の論理の整合性を証明できてしまうなら、ゲーデルの不完全性定理によって自分の論理そのものが整合性の証明も含めどこかしらに矛盾を内包してしまうからです。」ということです。つまり、整合性のある人は自分の整合性に言及できないんですね!


いやあ、「無限ループ」の定義を直感的に優れたものにすることを諦めてただ単に厳密な定義を与えるだけでもこれほど骨が折れるものなんですね。ルール・グルたちの日々の苦労がうかがえます。。
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みなさんはどういう時どういう考えで1ランドkpしますか?

1ランドkpは怖いですが、低マナ域のカードを多く引いた場合や《霊気の薬瓶/AEther Vial》もしくは《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》を引いた場合、また対ぶっぱ系コンボで《Force of Will》を引いた場合など、どうしても1ランドkpしたいときは少なくありません。
しかしながら、1ランドkpをした場合に次土地を引きこめる確率は考えたことがございますでしょうか? 例えば1ランドブレストkpの場合、2ターン目に土地にアクセスできなかったら通常5ターン目まで2枚目の土地が置けないことになります。これはたいていのマッチで負けのパターンですね。もしこの確率が「更にマリガンする場合の勝率」より低いならば、マリガンをすべきということです。

恐らく多くのプレイヤーは1ランドブレストkpする際に次のターンに2枚目の土地を置ける確率やの正確な値は意識せずに、ある種の直感と呼ばれるもの(それまで培ってきた経験則)でマリガンするかどうかを決めていると思いますが、あいにく私はそもそも《渦まく知識/Brainstorm》を使うデッキをごくたまにしか使わないため、そういった直感を持ち合わせていないのでこういう計算が必要になるわけです。

もし既に青を使い慣れていている方でもこういった確率を計算したことがないならば参考までにご覧ください。立式さえできてしまえば計算式の意味自体は中学生でもお馴染みな確率の式なので、みなさんもご自身で好きな状況での計算ができるように計算の方法(どのように状況を簡略化させて立式まで持っていくか)も書いておきました

今回は略記として、
 C(n,m)=Combination(n,m)=n!/m!(n-m!) (n≧m)
を用います。


【1ランドkp】

(1) ただの1ランドkpの場合
参考までに比較対象として、ドローソースのない状況で1ランドkpをした場合に次のターン土地が引ける確率を計算しておきましょう。これは計算式を書くまでもないので結論の表だけ書きます。

結論:1ランドkpで2ターン目までに2枚目の土地にアクセスできる確率Pは先攻・後攻で土地枚数L=16,18,20,22[枚]ごとにそれぞれ
 先攻の場合
 L[枚] 16 18 20 22 24 42
 P[%] 28 32 36 40 43 77

 後攻の場合
 L[枚] 16 18 20 22 24 42
 P[%] 49 54 59 64 68 95

となります。当然ですがさすがに少ないですね。先攻だとせいぜい3~4割、42landsの土地単でさえ8割弱です。後攻なら多少は上がるといっても6~7割。ドローソースなしで1ランドkpをした場合はまず数ターン土地を引かない状況を覚悟しなければいけませんね。
(後攻の42landsの土地単ならほぼ確実に土地引けますけどね!)


(2) 1ランド《渦まく知識/Brainstorm》kpの場合
まずはあなたが先攻で、かつあなたのデッキの土地の枚数が18枚であるとして計算します。立式の方法が分かったら、一般の枚数で計算してみましょう。
簡単にするため、後攻が《不毛の大地/Wasteland》1枚ともう1枚以上土地を握っている場合は確実に不毛を撃ってきて、そうでない場合は不毛は打ってこないものとします。また相手が事故ってるのかわからないブレストに対し《目くらまし/Daze》や《Force of Will》を切るということもないとします。(しかし[NPH]で《精神的つまづき/Mental Misstep》が出たのでつまづきに打ち消される可能性なら十分にあり、本当は不毛と同じくらいそこも考慮しないといけないと思うのですがまあ許してください^ρ^ 不毛と違って精神的つまづきはアーキタイプを決めても採用枚数が0~4枚までまだはっきりと決まっていないので確率を計算するには情報が不確定すぎるのです。ですがその枚数を設定してあげれば計算できるので、その方法は(3)に譲りましょう)

相手が返しのターンに不毛を撃ってこない場合、先攻の2ターン目にブレストを撃つことになるため、このときアクセスできる枚数は先攻の初手7枚を除いて4枚(先攻2ターン目のドロー1枚+ブレストの3枚)なので、この中に土地が1枚でもある確率は
 (1-(C(36,4)/C(53,4))×100=79[%]
で、逆に相手が返しのターンに不毛を撃ってくる場合、後攻の1ターン目にレスでブレストを撃つことになるため、このときアクセスできる枚数は先攻の初手7枚を除いて3枚(シャッフル手段がないからブレストの3枚のみ)なので、この中に土地が1枚でもある確率は
 (1-(C(36,3)/C(53,3))×100=70[%]
です。そして、そもそも後攻が返しのターンに不毛を撃ってくる確率、つまり後攻が1ターン目に不毛とそれ以外の土地を握っている確率は、相手のデッキに不毛が4枚入っていて土地が20枚だと仮定すると(不確定な情報を扱って確率を計算するときは何らかの「妥当な」仮定をするのが常套手段です)、
 (1-C(56,8)/C(60,8)-C(4,1)×C(40,7)/C(60,8))×100=42[%]
 (不毛を引いていない事象と不毛1枚しか土地を引かない事象の余事象の確率)
となります。このときノーランドkpというありえない事象は不毛を引いていない事象に含まれているためちゃんと除外されていることに注意しましょう。従って、結局今回の状況で2ターン目までに2枚目の土地にアクセスできる確率は、(先攻のカード分布と後攻のカード分布は独立な事象であることに気を付けて計算すると)
 79×(100-42)/100+70×42/100=75[%]
となります。さすがブレスト、1ランドでも割と安心。もしマリガンしても勝てる確率が75%を上回ってるならマリガンすべきですが、そういうマッチは少ないでしょうね。

では土地枚数を変えるとどうでしょう? 20枚の場合は、立式の方法は(1)と同じなので省略して、
 (1-C(34,4)/C(53,4))×100=84[%]
 (1-C(34,3)/C(53,3))×100=74[%]
 84×(100-42)/100+74×42/100=80[%]
より80%で、22枚なら
 (1-C(32,4)/C(53,4))×100=88[%]
 (1-C(32,3)/C(53,3))×100=79[%]
 88×(100-42)/100+79×42/100=84[%]
より84%、また16枚なら
 (1-C(38,4)/C(53,4))×100=75[%]
 (1-C(38,3)/C(53,3))×100=64[%]
 75×(100-42)/100+64×42/100=70[%]
より70%になります。


更に今度はあなたが後攻の場合を考えましょう。
先攻の場合と比べてあなたがアクセスできるカード枚数が1増えますが、相手が不毛を撃ってくる確率は変わりません。(相手がこっちのターンの返しのターンまでに引けるカード枚数は8枚のままなので)ただしそれはあくまで相手が1・2ターン目にドロー呪文を使ってこない場合の話で、それを考慮したら若干確率は上がりますが今回は無視していきましょう。あとは(1)と同様に考えて、土地18枚なら
 (1-C(36,5)/C(53,5))×100=87[%]
 (1-(C(36,4)/C(53,4))×100=79[%]
 87×(100-42)/100+79×42/100=84[%]
より84%になります。先攻と後攻が入れ替わっただけでかなりの変化ですね。これなら後攻は積極的に1ランドkpしたくなっちゃうかも? 他の土地枚数の場合も確かめますと、20枚なら
 (1-C(34,5)/C(53,5))×100=90[%]
 (1-C(34,4)/C(53,4))×100=84[%]
 90×(100-42)/100+84×42/100=87[%]
で87%、22枚なら
 (1-C(32,5)/C(53,5))×100=93[%]
 (1-C(32,4)/C(53,4))×100=88[%]
 93×(100-42)/100+88×42/100=91[%]
で91%、16枚なら
 (1-C(38,5)/C(53,5))×100=83[%]
 (1-C(38,4)/C(53,4))×100=75[%]
 83×(100-42)/100+75×42/100=80[%]
で80%になります。土地16枚のデッキだとしても80%というのは大きいですね。

結論:1ランドブレストkpで2ターン目までに2枚目の土地にアクセスできる確率Pは先攻・後攻で土地枚数L=16,18,20,22[枚]ごとにそれぞれ
 先攻の場合
 L[枚] 16 18 20 22
 P[%] 70 75 80 84

 後攻の場合
 L[枚] 16 18 20 22
 P[%] 80 84 87 91

となります。(後攻の場合の表の非凸性が気になった人は有効数字に注意しましょう)


(3) 先攻1ランド《霊気の薬瓶/AEther Vial》kpの場合
この場合に気になるのは2ターン目までに2枚目の土地を引ける確率よりも1ターン目に《霊気の薬瓶/AEther Vial》を置ける確率ですね。その確率を計算する際に考慮しなければいけないのは相手が妨害手段、則ち《Force of Will》や《精神的つまづき/Mental Misstep》を握っているかどうかです。

まず(2)で断ったように、Willと違ってつまづきは相手のデッキタイプが分かったとしてもその採用枚数がわかりません。ですので色んな枚数ごとに分けて計算しましょう。まず始めに、相手のデッキにはWillが4枚入っていてつまづきは入っていない場合を考えます。この場合バイアルが打ち消されないのは相手の手札にWillがないか、または青いカードがWill1枚しかない場合です。前者の確率は
 C(56,7)/C(60,7)×100=60[%]
で、後者の確率はBlue Countが20だと仮定すると
 C(4,1)×C(40,6)/C(60,7)×100=4[%]
となるので、結局Willで打ち消されない確率は
 60+4=64[%]
となります。

ではさらに、Will4枚につまづきも4枚ある場合はどうなるでしょう? この場合にバイアルが打ち消されない確率は、「相手の手札につまづきがもWillもない確率」+「相手の手札にWill1枚しか青いカードがない確率」となるので後者は先程と同じ4%、前者は
 C(52,7)/C(60,7)=35[%]
となるので、結局合計
 35+4=39[%]
となります。精神的つまづき4枚参入したことにより、初手のバイアルが通る単純な確率が25%も減ってしまいました。

ついでにつまづきの採用枚数が2枚の場合はどうでしょう。この場合は初手にWillもつまづきもない確率がちょっと上がり
 C(54,7)/C(60,7)=46[%]
となるのでバイアルが通る確率は
 46+4=50[%]
となり、たった2枚のつまづきの存在でも14%も変わってしまうことになります。つまりバイアルが苦手なデッキにつまづきを入れる場合、4枚積むスロットがどうしてもないならば1ターン目専用の追加のWillとして2枚だけ挿すという方法も考えられるわけですね。もちろん1ターン目が過ぎてもつまづきは限定的ながら強力な打ち消しであり続けるのですが。

そして最後に、相手が青いデッキでない場合を考えましょう。この場合妨害手段はつまづき4枚のみとなり、初手につまづきがない確率のみを考えればいいのでそれは既に何度も見ているように60%となります。この数字をどう考えましょうか。もはやあなたのバイアルは青くないデッキ相手でさえも、つまづきを積まれているだけで4割打ち消されることになります。この4割というのは今まで青いデッキ相手にバイアルが通らない確率(つまりWillされる確率)36%よりも多くなっているのが新しいですね。

結論:先攻1ランド《霊気の薬瓶/AEther Vial》kpの場合に初手のバイアルが通る確率Pは相手の《精神的つまづき/Mental Misstep》の採用枚数M=0,2,4[枚]ごとにそれぞれ
 青いデッキ相手の場合
 M[枚]  0  2  4
 P[%] 64 50 39

 青くないデッキ相手の場合
 M[枚]  0  4
 P[%] 100 60

となります。


どうでしょうか? 私は今まで青いデッキ相手にもそれなりに先攻1ランドバイアルkpしてきましたし、青くないデッキ相手ならなおさらでした。しかしこれからは、先行1ターン目のバイアルは青くないデッキ相手にも4割打ち消され、青いデッキ相手なら最悪6割打ち消されます。しかも打ち消された後に土地を引ける確率は(1)で計算した通り30~40%程度しかないので、1ランドkpした先攻のバイアルが打ち消されてかつ次のターン土地が止まってしまうという絶望的な確率は青くないデッキ相手でも20~30%、青い相手なら最大40%程度になり無視できないレベルになりますね。

さらに1ランド《貴族の教主/Noble Hierarch》kpや1ランド《緑の太陽の頂点/Green Sun’s Zenith》kpでも同じことです。これらに対しWillを切る人は少なかったでしょうが、つまづきを切る人は多いでしょうね。となると相手のデッキに精神的つまづきが入っているかどうかすらわからない状況で、これからは常に4割は打ち消されると覚悟した上で1ランドkpをするかしないか考慮しないといけないのかもしれませんね・・・。


また(3)と同様の方法で、相手のデッキにつまづきが何枚入っているか設定すれば(2)の1ランドブレストkpや1ランド独楽kpで2枚目の土地にアクセスできる確率はより正確に計算できます。私はこれを書いてる間に眠くなっちゃったので、だれか気が向いたら挑戦してみてください(-ω-`)°
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前回(http://himajin.diarynote.jp/201104302333514699/)の続きです。

3回の日記に分けて、
・ベイズ理論(確率論)
・ギャンブラーの罠(心理学)
・コンコルドの誤り(経済学)
をテーマに対コンボなどへのマリガン基準からプレイング全般に関するいろいろを解説します。

今回でこのシリーズは最後です。


【コンコルドの誤り】
さて、今回は各フォーマットで人気を集めてる《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》のmode選択に関する問題です。

Q:以下の各シチュエーションにおいて(*)印以降のプレイングは論理的に整合性があるでしょうか?((*)以前のプレイングがあっているかどうかは関係ありません) ただしジェイスの使い方が正しいかどうかを考える問題ではなく、あくまでそのプレイングを選択する過程の思考に論理的整合性があるかどうかだけ判断してください。

※あらかじめ念入りに注意をしておきますが、問題を考えた私自身は使ってるデッキ(http://himajin.diarynote.jp/201102172159081800/)の偏りからジェイスをあまり使ったことがありません。たぶん数回ほど出して使ったことがあるのと《占有/Take Possession》でジェイスを1回奪ったことがある程度なのでジェイスのプレイングに関しては初心者です。

(1) Mono Blue BtB対The Rockの状況です。あなたは忠誠度5の《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をコントロールしており戦場には他に互いに土地が十分にあるだけで、こちらの手札には《Force of Will》や《ヴィダルケンの枷/Vedalken Shackles》などがあります。あなたがフルタップでターンを渡したのに相手は何もアクションせずにターンを返しました。これを受けあなたは相手の手札が弱いと考え、しかもこちらは手札にWillと枷があり万全なのでジェイスのmode 1で優勢を固定しようとしたら、相手のトップは《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》でした。あなたはこれを弱いと判断しトップに残してターンを渡したところ、相手は再び何もせずターンを返しました。(*)続くあなたのターンです。さっきは気付きませんでしたがよく見たら相手のコジレックで落とせるカードは枷だけだったので、ジェイスのmode 2で枷を逃がせばさらに安全になると考え、さっきコジレックをボトムに置かなかったにもかかわらず今度はmode 2で枷をトップから2番目に戻しました。

(2) Mono Blue BtB対The Rockの状況です。あなたは忠誠度7の《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をコントロールしており戦場には他に互いに土地が十分にあるだけで、お互いに手札はありません。あなたはジェイスのmode 1で勝負を決めにいこうとしたら、相手のトップは《森/Forest》でした。あなたはこれを弱いと判断してトップに残しターンを渡したところ、相手は当然森をセットしただけでターンを返しました。(*)続くあなたのターンです。あなたはこの時点でまだカウンターもクリーチャー対策も引いていないことに気付き、相手に有効牌を引かれたらまずいかもしれないと思いましたが、ここでmode 2を使うなら前のターンからそもそもmode 2を使うべきだったと考え、あなたは初志貫徹の意図で今回もmode 1をしました。

(3) Mono Blue BtB対The Rockの状況です。あなたのライフは4で、あなたは忠誠度13の《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をコントロールしており戦場には他に互いに土地が十分にあるだけで、こちらの手札は《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》だけですが相手は手札が7枚あります。あなたは青マナで調査を唱え相手の手札を確認した上でジェイスのmode 4を決めたので、相手の山札があと7枚でその内訳は基本土地6枚と《復讐蔦/Vengevine》だけだと分かっています。あなたがそのままターンを渡したところ、相手は何もせずターンを返しました。あなたはカウンターもクリーチャー対策もなくもし蔦を引かれたら速攻で殴られて負けてしまうので、この後3ターンあなたはジェイスのmode 2で解答などを探しにいき、それ以外はお互いその間何もしませんでした。ちなみにライブラリーシャッフル手段はありませんでした。(*)続くあなたのターンです。この時点でまだカウンターもクリーチャー対策も引いていないあなたは引き続きmode 2を選んだ方が、既に連続でmode 2でライブラリーを掘って非解答カードを引いているためライブラリー内に占める解答の枚数比率が3ターン前より若干上がっているので、解答にアクセスできる確率が高くなっていると考えmode 2を選びました。


では順に正誤を見ていきましょう。

(1)の考え方はあっています。たとえ前のターンにmode 1を選んでいたからと言って、それが次のmode 2を選択することへの抑止になることはありません。コンコルドの誤りとは投資に関する理論で、「断続的な投資を継続する際に、次の投資に関するリスクとリターン以外の要素として過去にどのようなパターンの投資をしたかを考慮することはまったく重要でなく、それはあくまで心情的な要素でしかない」ということです。今回のケースでも、過去にmode 1を選んだこととは関係なくその時考えうる最善の選択をすべきということです。

(2)の考え方は誤っています。初志貫徹という考え方こそそれ単体では無意味で、前回と同じ試行をすることに意味があるかどうかをその都度別個に考えるべきです。それに「次にmode 2を使うならば元々mode 2を使っておくべきだった」という考え方も、過去を悔やむのは勝手ですがそれはまた別の話です。

(3)の考え方は半分あっていて半分間違っています。まずあっている部分についてですが、今回の場合は同じ初志貫徹でも(2)のように無意味なものではなく、それまでの試行が次の試行へどう影響しているか考えた上での反復なので、コンコルドの誤りとは別で整合性が取れた考え方です。コンコルドの誤りとはあくまで「断続的な投資を継続するに際しに過去の選択を次の投資のリスクやリターンとは関係なく大きな要素として考慮すること」でして、過去の選択を次の投資のリターンの計算に用いる分には何ら問題がありません。むしろ積極的に過去の選択は計算のための情報に入れるべきですね。(2)ではそういうのとは別に、ただ単に初志貫徹という意図だけで次の投資への影響を考慮しなかったことが問題なのです。そして今度は間違っている部分についてですが、相手の残り山札の枚数は3枚なのでトップに蔦がある確率は33%です。トップに蔦がある場合にmode 1を選択すれば蔦が3枚の山札のボトムに行くので2ターンの猶予ができます。従って蔦を引かれるまでにあなたは通常のドローとジェイスのmode 2で合計4枚のカードを引けます(シャッフル手段のない状況で既に3ターン連続でmode 2を使っているので、mode 2を使っても引ける3枚のうちアクセスできる新しいカードは1枚だけであることに気を付けてください)。もしmode 2を選択していたならば1枚のカードにアクセスできるだけとなりますので、結局mode1を選択しておいた方が蔦を引かれるまでに3枚分多くのカードにアクセスできたことになります。逆にトップに蔦がなかった場合はmode 1は何もせず、mode 2だと1枚分多くカードにアクセスできます。この場合は次のターンにmode 1を選ぶこともmode 2を選ぶこともできますが、いずれの場合にしても次のターン以降にアクセスできる枚数はこのターンにmode 1とmode 2のどちらを選んだかとは独立になるので、結局このターンから数えて蔦を引かれるまでにこちらがアクセスできる枚数はこのターンにmode 1を選んでおいた方が1枚多いということは変わりません。以上をまとめると、このターンにmode 2を選んだ場合に蔦を引かれるまでにアクセスできる枚数とmode 1を選んだ場合の枚数の差の期待値は
 -3×(1/3)+1×(2/3)=-1/3[枚]
となり、実はmode 1を選んでおいた方が解答を引きやすかったわけですね。


さて、あなたは何も考えずに
「さっきのターンにmode 1でフィニッシュに入るって決めたんだからこのターンも初志貫徹でmode 1にしよう」
とか
「よく考えたらさっきのターンからmode 1に入ればよかったのにmode 2でアドを取りに行ってしまったのでどうせならこのままもうちょっとmode 2でアドを固めてからmode 1に移ろう」
とか
「相手がさっきmode 1してきたのに今度はmode 2をしてきた、これはプレイングが一貫していないので理解できない」
といった思考はしていませんでしょうか。それこそコンコルドの誤りに基づいた誤謬なので、気を付けていきましょう。まあ確かに一貫した動きをするのは強そうに見えるかもしれないので、そういう見栄がブラフとして有意に働いてくれる可能性も否定できませんけどね!

というわけでこのシリーズはこれでおしまいです。ベイズ理論は直感に反しやすい理論なので盲点が多かったですね。ギャンブラーの罠やコンコルドの誤りは、私のあげた例ですと人によっては「そんなミスするわけないでしょー」と思うかもしれませんが、意識していないと対戦でも日常生活でも頻繁に起こる勘違いなので、ぜひ対戦中は一呼吸おいて自分のプレイングが勘違いでないかどうか確認してみるといいかもしれませんね。
目次:http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
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前回(http://himajin.diarynote.jp/201104240333312691/)の続きです。

3回の日記に分けて、
・ベイズ理論(確率論)
・ギャンブラーの罠(心理学)
・コンコルドの誤り(経済学)
をテーマに対コンボなどへのマリガン基準からプレイング全般に関するいろいろを解説します。


【ギャンブラーの罠】
前回は問題設定が地味に複雑だったので、簡単な問題から徐々に難しくしていく感じにしてみました。ちなみに問題のすべてがギャンブラーの罠に関係するわけではありません。前回のベイズ理論に関する復習や群論のちょっとした豆知識が含まれています。

Q:以下の計算および計算に基づいたプレイングは論理的に正しいでしょうか?

(1) 《岩滓のワーム/Scoria Wurm》のコイントス能力を2回連続で失敗したので、今度のコイントスで失敗する確率は(1/2)^3×100=13[%]しかなく、次のターンのアタッカーにカウントしても問題ないでしょう。

(2) 7枚引いたらノーランドだったのでマリガンをするために手札を山札に加えてヒンズー・シャッフルをし、6枚引きました。今度は土地しかなかったのでシャッフルの回数が足りないと思い、入念にヒンズー・シャッフルを5回した上でマリガンをし5枚引きました。しかし再びノーランドになりました。もう1度ヒンズー・シャッフルしても次もどうせノーランドか土地のみの手札になるので、次は別のリフル・シャッフルなどでマリガンをすべきでしょう。

(3) 《神聖の力線/Leyline of Sanctity》を1ターン目に置ければだいたい勝てるマッチで、マリガンなしの7枚には力線がなかったのでマリガンしましたが今度もありませんでした。(2回のマリガンまで許す場合に4枚挿しのカードを初手に引ける確率は72%であることを踏まえた上で)次も力線を引けない可能性は低いので、積極的にマリガンすべきでしょう。

(4) 《神聖の力線/Leyline of Sanctity》を1ターン目に置ければだいたい勝てるマッチで、マリガンなしの7枚には力線がなかったですが、代わりに《血清の粉末/Serum Powder》を引きました。粉末の能力で7枚引き直しましたが再び力線はなく、さらに粉末を引きました。2回も粉末でマリガンをすれば力線を引けない可能性は低いので、積極的に粉末の能力でマリガンすべきでしょう。

(5) 対戦相手が《Illusionary Mask》で3体の1マナクリーチャーを裏向きに唱えました。事前に《ギタクシアの調査/Gitaxian Probe》で手札を覗いていたのでそれらは1体が 《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》で残りの2体が 《貴族の教主/Noble Hierarch》であることが分かってます。そのうち1体を《ヴィダルケンの枷/Vedalken Shackles》で奪いました。こちらは《通電式キー/Voltaic Key》をコントロールしており十分なマナもあるのでその気になれば枷で奪う対象を変更できます。枷がドレッドノートを奪えた確率は1/3と低めで不安です。そこでもう1体に《剣を鍬に/Swords to Plowshares》を撃ったところ追放されたのは貴族の教主でした。すると枷もソープロも貴族の教主を対象に選んでしまっている確率は
 Combination(2,2)/Combination(3,2)×100=33[%]
であり50%より低くなったので、満足してターンを返します。

(6) 対戦相手が《Illusionary Mask》で3体の1マナクリーチャーを裏向きに唱えました。事前に《ギタクシアの調査/Gitaxian Probe》で手札を覗いていたのでそれらは1体が 《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》で残りの2体が 《貴族の教主/Noble Hierarch》であることが分かってます。そのうち1体を《ヴィダルケンの枷/Vedalken Shackles》で奪いました。こちらは《通電式キー/Voltaic Key》をコントロールしており十分なマナもあるのでその気になれば枷で奪う対象を変更できます。枷がドレッドノートを奪えた確率は1/3と低めで不安です。そこで対戦相手を対象に《悪魔の布告/Diabolic Edict》を撃ったところ当然裏向きの貴族の教主を生け贄にささげられました。すると残り2枚のうちどちらがドレッドノートかは5分5分なため枷がドレッドノートを奪っている確率は50%と元の1/3より大きくなったので、満足してターンを返します。


では順に正誤を見ていきましょう。

(1)の考え方は明らかに誤りです。《岩滓のワーム/Scoria Wurm》の能力は何回起動したところで、そのコイントスは他のコイントスの結果と独立な事象です。従いまして、2回失敗していようと2回成功していようと、次のコイントスに成功する確率は50%のままです。これがギャンブラーの罠で有名な誤謬の例です。ギャンブラーの罠とは、反復可能な試行Aの中である事象Bが起こる確率pが決まっているとしてその試行Aを複数回繰り返すとき、「次の試行Aで事象Bが起きる確率」をpとは別に「他の試行Aで事象Bが起きた割合」から推測し直してしまうことです。それは人間の行動心理が演繹的思考よりも率先して帰納的思考に基づいているために生じる誤謬で、気付かないうちに行ってしまっているため注意が必要です。

(2)の考え方は半分間違っていて半分あっています。まず間違っていることについて。入念に多めの回数ヒンズー・シャッフルをしていい手札が来なかったからと言って、ヒンズー・シャッフルがあてにならないというわけではありません。勘違いされやすいのですが、実はシャッフル回数は多ければ多いほどいいというわけではないのです。60枚のデッキをシャッフルする方法は無意味なシャッフルの仕方も含めて60!=8.3×10^81パターンあり、しかもいずれの方法も位数が60の約数であることが知られています。すなわちどのシャッフル方法も(それが正確に再現可能ならば)60回くりかえしてしまうとシャッフルする前の状態に完全に戻ってしまうということです。60回は最大値なのでとても大きな数ですが、シャッフルの仕方によっては60の約数で12回だったり10回だったりひどい場合は5回でも元の状態に戻ってしまいます。もちろん完全に同じシャッフルの方法を何度も繰り返すことは難しいですが、ヒンズー・シャッフルなりリフル・シャッフルなりはその人の手の大きさや癖で無意識に完全にとはいかずにもわりと同じようなシャッフルを繰り返してしまったりしているのです。特にヒンズー・シャッフルは元に戻る回数が低くなりやすいシャッフルなので気をつけましょう。気を付ける方法としては、「シャッフルをする回数を60と互いに素な回数(例えば1回か7回)にする」「ヒンズー・シャッフルのように複数枚単位で動かすシャッフルはデッキ枚数の60と互いに素な回数の移動で1回分のシャッフルが終わるようにする」「リフル・シャッフルやディール・シャッフルのようにカードを1枚1枚動かす方法でシャッフルする」「複数種類のシャッフルを組み合わせて行う」などです。特に性質の異なる複数種類の組み合わせは多くの場合複雑なシャッフルを生成し元に戻りにくくなるのでおすすめです。以上から、シャッフル方法を変えるという選択は結果的にあっていたわけですね。余談ですがプログラミングでシャッフルのアルゴリズムを組む場合、プログラミングは書かれた内容通りに正確にシャッフルしてしまうため複数回やったら確実に元の状態に戻ってしまうので、元に戻るための回数が大きくてしかも互いに異なる(できれば最大公約数が小さな)シャッフルを複数用意してそれを乱数を用いてランダムに組み合わせるなどの工夫が必要です。

(3)の考え方は誤りです。7枚引いてもマリガンしても来なかったからといい、次のマリガンで力線が来る確率はそれらとは関係なく(ギャンブラーの罠)、単純に5枚引いたときに力線が手札に来る確率そのものです。確かに2回までマリガンができる状況で力線を手札に入れられる確率は72%ですが、初めの7枚になくて1回マリガンしてもなかったという条件下では確率は変わり、たった30%になってしまいます。(詳しくは前回のベイズ理論についての解説http://himajin.diarynote.jp/201104240333312691/をご参照ください)それを意識したうえでマリガンするか今の手札で戦うか考えなくてはいけませんね。

(4)の考え方はあっています。(3)とどう違うのかといいますと、粉末によりマリガンをした場合ライブラリーが初期化されないので、力線を引ける確率はどんどん上がっていくことが分かります。このように、過去の試行の結果が次の試行の状況に影響してしまうような場合にはギャンブラーの罠が生じることはないのです。具体的には2回粉末を使った後で7枚引いて力線を得られる確率は
 (1-Combination(42,7)/Combination(46/7))×100=50%
となり、粉末なしに初めの7枚で力線を引ける確率の40%より高くなっています。ただし粉末を使う上で気をつけなくてはいけないのは、欲しいカード以外のカードが追放されて欲しいカードが引ける確率が上がっている反面デッキのバランスが異常に崩れてしまう可能性もあるということです。特にノーランドや土地のみのハンドで粉末を使うのは事故の原因になるので避けた方がいいでしょう。今回の状況でも手札次第では2回目は粉末を使わずにマリガンをするという選択肢を一考すべきで、その場合に力線を引ける確率は
 (1-Combination(49,6)/Combination(53,6))×100=39[%]
とおよそ40%で、これはマリガンなしの7枚で力線を引ける確率とほぼ同じです。そう言われると粉末を引いていても普通にマリガンをする選択肢が十分アリなことが分かりますね。

(5)の考え方は間違っています。少々状況が複雑になっていますが、ソープロで追放できたのが貴族の教主と分かった後だと「手の檻とソープロが両方とも貴族の教主を対象に選んでいる確率」は変化してしまっています。それは「ソープロで追放できたのが貴族の教主と分かっている条件下で手の檻も貴族の教主を対象にしている確率」となり、ベイズ理論により
 (Combination(2,2)/Combination(3,2))/(Combination(2,1)/Combination(3,1))×100=50[%]
と計算されます。これは「1体ソープロで貴族の教主が当たったんだからもう1体枷でも貴族の教主が当たってるなんて確率は低いだろう」というギャンブラーの罠的思考とはまったく違うということに気を付けてください。除去していけば選択肢も減っており、ギャンブラーの罠が成立する「複数回の試行が可能で各試行が他の試行に影響しない」という条件を満たしていないのです。

(6)の考え方も間違っています。布告で貴族の教主が生け贄に捧げられることは相手の選択であり確率的な問題ではないのでこちらにとって何の情報も与えず、「枷がドレッドノートを奪っている確率」は(5)の場合と違って1/3のままなのです。従って、実はこの場合だと布告の後にさらに枷を通電式キーでアンタップしてさっき奪ったクリーチャーと別のクリーチャーを奪い直した方がドレッドノートを奪える確率が2/3に上がり、最善のプレイングになるわけですね。状況と確率は変わらなくても選択肢が変わったのでこのようにちょっと気づきにくいプレイングが生じるわけです。これも盲点になりやすいですがベイズ理論を意識すると納得な選択ですね。



今回はちょっぴりまじめな解説でした( ´▽`)⌒☆
このシリーズは次回(http://himajin.diarynote.jp/201105141606416993/)が最後です。コンコルドの誤り、お楽しみに!
目次:http://himajin.diarynote.jp/201103131200449531/
コラム:http://himajin.diarynote.jp/?theme_id=12

3回の日記に分けて、
・ベイズ理論(確率論)
・ギャンブラーの罠(心理学)
・コンコルドの誤り(経済学)
をテーマに対コンボなどへのマリガン基準からプレイング全般に関するいろいろを解説します。


【ベイズ理論】
Q:レガシーの対戦。あなたはDragon Stompy、対戦相手はCanadian Thresholdを使っており、g1を落としてg2の開始時です。先攻のあなたは1回マリガンを宣言し、後攻の相手のkp宣言を聞いた上で6枚の手札をkpしました。この時1ターン目に《血染めの月/Blood Moon》キャストが可能なものであるとして、それが4積みの《Force of Will》で消されてしまうと絶望的な手札だとします。初手ぶっぱするかどうかを決めるには相手の手札の情報がほしいところです。では、対戦相手の手札にWillがある確率は何%でしょう? ただし簡単のためWillがあるときはいつも他に餌の青いカードもあるものとします。

確率論を知っている人なら即答で
 (1-combination(56,7)/combination(60,7))×100=40[%]
と答えるかもしれませんが、それは誤りです。何故なら40%という数字は7枚引いた初手にWillがある確率であって、7枚引いた初手がkpされている条件下でWillがある確率ではないのです。つまり、ただ7枚引かれたという情報だけでなく、相手がそれをkpできる内容であるという情報も得ているわけなのです。では40%以上であることは間違いないですが、実際は40%よりどの程度高くなるのでしょう? それを考えるためにはベイズ理論やフェルミ推定の考え方を用いると非常に便利です。ベイズ理論は経済学の論文「Doomsday Argument」(人類の歴史があとどのくらい続くか)で、フェルミ推定は天文学の「ドレイクの方程式」(地球外生命体と交信できる確率)で使われたことで有名で、いずれも理系の人が不確定量を計算するときによく使う非常に便利で基本的な概念です。
ベイズ理論とはどのようなものかというと、AとBという関連した事象が起こりうるとして「Aが起きたという条件の下でBも起きている確率」は単に「Bの起こる確率」とは異なり、その値は「AもBも両方起きる確率」÷「Aが起きる確率」となり「Bの起こる確率」という変数が入らない式になります。重要なのはAとBの因果関係の形に関係なく、時に因果律に逆らった方向で情報が得られるという点です。例えば「Bが起きたらそれを原因としてAが起きることが多く、その確率もわかっている」という状況を考えましょう。そういう時に、逆にAが起きたという情報があればBも起きている確率の情報まで得られるという直感的でないことがおきるということです。具体的にはAが「昼食に牛乳が出る」という事象、Bが「昼食にパンが出る」という事象だとしてそれらは相関のある事象とします。Aの確率が80%、Bの確率は50%、Bが確定していればAの条件付き確率を100%、つまりパンが出る日はいつも牛乳も出るとしましょう。そうなると、「昼食に牛乳が出る(A)ことが確定しているときにパンも出る(B)」確率はどうなるでしょう? 普通に考えてしまうと、パンが出れば牛乳が出ることは分かっても逆に牛乳が出ているからと言ってパンが出るとは限らないわけで、その確率についても何ら情報がないように見えます。しかし、AかつBとなる確率はBの確率と等しく50%なので、ベイズ理論に基づくと「昼食に牛乳が出ることが確定している状況でパンも出る確率」は50/80×100=63[%]となり、これは単に「パンが出る」確率50%と異なってしまいます。これは簡単な状況なので当たり前に感じてしまう人も多いかもしれませんが、もっと複雑な状況だとうっかり忘れてしまうことも多いので非常に大切な考え方です。
フェルミ推定はどのようなものかというと、直接には決定が難しくまるで取っ掛かりのない未知数を求める際に、未知数の計算に関わる「全ての変数を列挙」し、適切な近似を加えつつ最終的に未知数を「具体的に計算可能な式で記述」するというものです。これにより計算の手掛かりのなかった未知数を計算可能量とみなすことができます。先ほど例に挙げたドレイクの方程式についてですが、あなたがもし「地球外知的生命体に人類が会える確率を可能な限り厳密なパーセンテージで示して欲しい」と聞かれた場合、どのように計算しますか? とてもじゃないですが取っ掛かりがなさすぎて計算できないでしょうね。それを計算可能な値にしてしまうのがフェルミ推定です。

まず相手が初手をkpしている場合にWillがある条件付き確率Pは、Willがない条件下で相手が手札をkpする確率をQとおくと
 P=(40/(40+60Q))×100=100/(1+1.5Q)[%]
となります。ここで40や60という係数は上で計算した「7枚引いた初手にWillがある確率」とその余事象の確率です。つまり、Willがない条件下で相手が手札をkpする確率Qを計算できれば求めたかった確率Pが求まるわけで、例えばQ=0%(Willがなければ確実にマリガンしてくる場合)はP=100%なのでマリガンしなかったという事実だけで相手の手札にWillがあることが確定し、もしQ=100%(Willがなかろうとマリガンは絶対しない場合)となると相手がマリガンしなかったという情報がなんらエントロピーを与えないのでそのままP=40%になりますね。ではどのようにQを計算すればいいでしょう?

基本前提として、4枚積みのカードが手札に来る確率は、初めの計算と同様にcombinationを無理やり求めれば
 初手:40%、1マリ後:35%、2マリ後:30%
となり、つまり例えば初手の手札でWillがないとき、続く1マリでWillが得られる確率は35%、2マリ以内にWillが得られる確率は(0.35+0.65×0.30)×100=54.5[%]となります。これを用いてもうちょっと詳細な計算をしてみましょう。まずは未知数を記号でおいて、後でいろんな値を代入してみます。状況はまたDragon Stompy vs Canadian Thresholdでも何でもいいですが、1ターン目からぶっぱできるコンボとWillの4枚入っている十分青いデッキだとします。青いデッキに着目して、そのデッキがWillなしの初手で勝てる確率をp、Willありの初手で勝てる確率をq、マリガンをするたびに勝てる確率が減る割合を等比近似しrとおきます。7枚の初手でWillがない場合そのままの手札で勝てる確率はqなのに対し、1~2回マリガンをする場合の勝率はどうなるでしょう? 1回マリガンしてWillを引いて勝てる確率は0.35rp、1回マリガンしてWillを引かなかったけどそのまま勝てる確率は0.65rqなので、1回のマリガンで勝てる確率は
 0.35rp+0.65rq
です。さらに、1回のマリガンではWillが引けなかったとします。この条件下ではそのままの手札で勝てる確率はrqなのに対し、2回目のマリガンでようやくWillを引いて勝てる確率は0.30(r^2)p、2回のマリガンではWillを引かずにそれでも勝てる確率は0.70(r^2)qとなるので、これらを合計すると、この条件下で2回目のマリガンをする場合の勝率は
 0.30(r^2)p+0.70(r^2)q
となります。
以上をまとめると、もしrq≧0.30(r^2)p+0.70(r^2)qの場合はもしWillがなくてもマリガンは1回で止めたほうがよく、逆にrq<0.30(r^2)p+0.70(r^2)qの場合は1回目のマリガンでWillがなかったならマリガンをしたほうがよく、1~2回のマリガンで勝てる確率は
 0.35rp+0.65(0.30(r^2)p+0.70(r^2)q)
となります。なので、もしq≧0.35rp+0.65rqかつq≧0.35rp+0.65(0.30(r^2)p+0.70(r^2)q)の場合は初手にWillがなくてもマリガンをしないほうがよく、逆にq<0.35rp+0.65rqまたはp<0.35rp+0.65(0.30(r^2)p+0.70(r^2)q)の場合は初手にWillがないならマリガンをすべきとなります。というわけで、rとpとqに適当な値を代入してみましょう。rは経験則として0.8、pとqはp>qかつ0.50>qの範囲で適当に動かしてみます。初手にWillがない場合の最善の戦略での勝率をRとし、
 rq=0.80q、0.30(r^2)p+0.70(r^2)q=0.19p+0.45q
 rq-(0.30(r^2)p+0.70(r^2)q)=-0.19p+0.35q
 0.35rp+0.65rq=0.28p+0.52q、0.35rp+0.65(0.30(r^2)p+0.70(r^2)q)=0.40p+0.45q
 q-(0.35rp+0.65rq)=-0.28p+0.48q、q-(0.35rp+0.65(0.30(r^2)p+0.70(r^2)q))=-0.40p+0.55q
 0.35/0.19=1.8、0.48/0.28=1.7、0.55/0.40=1.4
(p,q)=(0.90,0.20)のときp/q=4.5で、
 Willを引かなければ2回までマリガンをするのが最善
 R=(0.40p+0.45q)×100=45%
(p,q)=(0.80,0.30)のときp/q=2.6で、
 Willを引かなければ2回までマリガンをするのが最善
 R=(0.40p+0.45q)×100=46%
(p,q)=(0.70,0.40)のときp/q=1.75で、
 Willを引かなければ1回までマリガンをするのが最善
 R=(0.28p+0.52q)×100=40%
(p,q)=(0.65,0.45)のときp/q=1.44で、
 Willを引かなくてもマリガンをしないのが最善
 R=(0.40p+0.45q)×100=46%
(p,q)=(0.60,0.50)のときp/q=1.2で、
 Willを引かなくてもマリガンをしないのが最善
 R=(0.40p+0.45q)×100=47%

まとめると、Willがある場合とない場合の勝率比がおよそ2倍以上ある場合は初手にWillがないならば積極的にマリガンすべきで、勝率比がおよそ1.5倍以下しかない場合はWillを引かなくてもマリガンをしないほうがいいということです。その間の勝率比については1.7~1.8の値で1回マリガンをすべきかどうかが切り替わるのでやや判断の難しいところですね。

さて、本題に戻りまして、一番初めの問いに答えるためにQを計算しないといけませんね。Qを計算するには、pとqの比が1.7以上あるかないかを考えればいいわけです。p/q≧1.7のときマリガンを1回以上するべきで、p/q<1.7のときマリガンをしないほうがいいわけです。つまり求めたかった「Willがない条件下で相手が手札をkpする確率」Qは「相手がp/q≧1.7と判断する確率」に一致するわけです。さらに簡単のためDragon StompyとCanadian Thresholdの相性差についてあなたと相手は議論したことがあり、q=0.3程度という認識を共有していると仮定します。(この仮定は少しいびつにみえるでしょうが、Dragon Stompy側からCanadian Thresholdに効くカードが多い関係でDragon Stompyが先手の場合の勝率を考える場合、恐らく多くのプレイヤーがWillさえこなければDragon Stompy有利すなわちq<0.50と設定する可能性が高く、このような状況で他に情報がなければ0.00と0.50の中間値0.25を四捨五入して3割という数字を心理的に出しやすいと思うので、この仮定自体はある程度の精度があるものと思われます)となるとp/q≧1.7の必要十分条件はp>0.5となり、Qは「相手がp>0.5と判断する確率」となります。では相手がpを判断するにはどういう思考をたどるでしょう? p>q=0.3は前提として、世の中に100%はないのでp<0.9と仮定する人が多いでしょう。すると0.3<p<0.9の範囲でpの判断値の分布を考えればよく、大体心理的に境界点での分布は薄く中心点が濃くなりやすいです。仮に均等な分布の場合はp>0.5となる確率は(0.2/0.6)×100=33[%]、正規分布や二項分布のような分布の場合は例えば量子化単位を0.1で計算すると((1+6)/2^6)×100=11[%]となり、おおよそ0.1<Q<0.3程度を目安に計算すればいいことがわかりますね。

以上より、求めたかった「相手が初手をkpしている場合にWillがある条件付き確率」P=100/(1+1.5Q)[%]は70~90%になるわけです。






(´▽`)。oO(という夢だったのさ)

そんなわけないでしょうね!

正確に言えば、「相手がベイズ理論とフェルミ推定で物事を計算するタイプでかつ心理的特徴が統計的に正規分布や二項分布を用いて予測できるならば、相手が初手をkpしている場合にWillがある条件付き確率は70~90%」であり、「相手がカジュアルだったりプレイングに確率論を意識しないタイプでかつ心理的特徴も予測不可能な場合、相手の行動は相手の手札を予測するための情報としての寄与があまりに薄弱なため、相手が初手をkpしている場合にWillがある条件付き確率は40%のまま」であるというだけのことです。それにまじめにQを計算したいのなら心理学的な側面から攻めるのではなくそこも素直に確率論として「Willがないハンドがkpできる内容である確率」を計算すべきですよね。


今回のハイライトは途中ででてきた、4枚積みのカードが手札に来る確率
 初手:40%、1マリ後:35%、2マリ後:30%
 (マリガンなしなら40%、1回までしていいなら合計61%、2回までしていいなら合計72%)

とWillがあるときとないときの勝率比p/qとマリガン基準の関係
p/q≧1.8なら
 Willを引かなければ2回までマリガンをするのが最善
1.7≦p/q<1.8なら
 Willを引かなければ1回までマリガンをするのが最善
p/q<1.7なら
 Willを引かなくてもマリガンをしないのが最善

というところですね。これらの数値はかなり重要なので覚えておいて損はないです。
ちなみにWillに限らず何らかの対策カードなどをサイドから6枠や8枠とっている場合にそれらが初手に来る確率もついでに書いておくとこんな感じです。
6枠の場合
 初手:54%、1マリ後:48%、2マリ後:42%
 (マリガンなしなら54%、1回までしていいなら合計76%、2回までしていいなら合計86%)

8枠
 初手:65%、1マリ後:59%、2マリ後:52%
 (マリガンなしなら65%、1回までしていいなら合計86%、2回までしていいなら合計93%)

ご覧のように、対策カードを2枠増やせば2マリしても同じくらい引けるということですね!
というわけで、青対策いっぱい入れましょう!ヾ(>ω<)ノシ


次回(http://himajin.diarynote.jp/201104302333514699/)はギャンブラーの罠についてです。

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